電気に関すること

【現場で使える!】インバータの交換方法|安全に取り替える為の手順とポイントとは?

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制御盤の中に収納されているインバータ。

インバータは、産業機械や工場内設備のモーターを動かすために欠かせない駆動装置です。

ですが、どんなに高性能なインバータであっても、長期間使用していると経年劣化や突然の故障などによって、交換が必要になることがあります。

でも、

Aさん
Aさん

インバータってどうやって交換したらいいの。。。?

Bさん
Bさん

自分1人で交換できるかな。。。(汗)

と、不安に思っている方もおられるのではないでしょうか。

この記事では、インバータの交換が初めての方でも対応できるように、必要な準備から実際の交換手順、注意点までを分かりやすく解説していきます。

インバータの正しい交換方法を知っておくことで、いざというときも落ち着いて対応できるようになります。

是非、記事の内容を参考にして現場でお役立てください。

ひでくん
ひでくん

確かに、インバータの交換って何か難しそうなイメージがあるよね

なべ
なべ

ポイントを押さえれば必ずできるようになりますよ!

この記事で分かること

基本的なインバータの取替手順について

取替作業は配線をさわることになりますので、必ず有資格者の方が実施するようにしましょう!

インバータって何?交換が必要になるタイミング

まずは、インバータの基本的な知識についておさらいしておきましょう。

インバータの役割

インバータとは、接続しているモーターの回転数を変えることで、回転速度を制御できる装置です。

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ひでくん
ひでくん

モーターのスピードをコントロールするのが、インバータの役割だね

工場で使われるクレーンやコンベアなどの産業機器はもちろん、家庭用のエアコンや電気自動車に至るまで、ありとあらゆるモーターの制御にインバータは使われています。

インバータを使うことでモーターの急な動作を和らげたり、装置を狙った位置にピタッと停止させるなど、制御面でのメリットが非常に大きいほか、電力の無駄を省くことができるなど、省エネ効果にも一役買ってくれています。

インバータの故障・寿命のサイン

インバータは様々な電子素子を使用した”電子機器”であるため、経年劣化や突発的なトラブル等によって故障することがあります。

以下のような症状が見られる場合は、交換を検討するサインです。

インバータがエラーで停止することが多くなった

今まで問題なく動いていたのに、インバータのエラーによって停止することが多くなってきたら、それはインバータ交換のサインかもしれません。

たとえば、「過電圧」や「過電流」といったエラーが、動き始めや減速時に頻繁に出るようになってきた場合、インバータ本体に不具合が出始めている可能性があります。

異常な振動や音が発生する

インバータの劣化や故障によって、制御しているモーターに振動や異音が発生するケースがあります。

もちろん、ベアリングなどの機械的な不具合によって発生する場合もありますが、インバータの出力が不安定になることで、モーターの動作に支障をきたします。

急にモーターの動きがギクシャクし始めたり、音や振動が発生したりしなかったりなどするような場合には、インバータの不具合を疑ってみてもいいかもしれません。

なべ
なべ

インバータの基板部分の接触不良によって、このような現象が発生したことがありました。

使用後、7〜10年が経過している

インバータ内部には「コンデンサ」と呼ばれる部品が使用されていて、このコンデンサの寿命が約7年〜10年と言われています。

そのため、インバータを長く使い続けていると、このコンデンサが劣化して性能が低下し、最終的には故障につながる可能性が高くなります。

コンデンサは周囲の気温や使用環境によって寿命が大きく左右されるため、特に高温環境になると寿命が短くなるため、注意が必要です。

ひでくん
ひでくん

大きなインバータになると、コンデンサだけを交換できるようになっているものもあるよ

インバータ交換前の段取り

インバータを交換する前に必ず以下の準備を行いましょう。

段取り①:インバータの仕様確認

まずは、交換に使おうとしているインバータが仕様に合っているかを確認しましょう。

  • 電源電圧はあっているか?(例:AC200V、AC400Vなど)
  • 容量(kW)はあっているか?
  • 機種やシリーズに互換性があるか?

インバータには電源電圧や容量の違いによって、同じシリーズでも沢山のバリエーションが存在します。必ず交換しようとしているインバータと、用意したインバータが同じ仕様であるか、銘板などを見て確認しましょう。

互換性のある機種であるかも、確認しておいたほうが良いでしょう。分からない場合は、メーカーの技術相談センターに確認しておくと安心です。

なべ
なべ

事前に対応表などを作っておくと安心ですね

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段取り②:道工具・資材の準備

インバータの交換は、全く同じ機種であれば一般的な手工具類だけで行えることがほとんどです。

ただし、新旧で取付寸法が変わったり、端子の位置や配線方式が変更になる場合は、追加で以下のような道具・資材が必要になる場合があります。

  • 電動ドリル(取付穴を明けるため)
  • 掃除機(切粉を掃除するため)
  • タップ(M4〜M6程度)
  • 圧着端子
  • フェルール端子(最近の信号線の配線に多い)
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インバータの取扱説明書には、取付穴のサイズや配線方法、接続する端子の種類などが詳しく記載されています。

そのため、作業に入る前に取扱説明書を確認して、何が必要かを事前にチェックしておくことがとても大切です。

ひでくん
ひでくん

道具や資材は多めに準備しておいた方が安心だね

インバータを取り外す前に行うこと

「インバータを準備したし、道工具や材料も準備したし、さあ外すぞ!」

…と、その前にちょっと待ってください!

インバータを取り外す前に、必ず以下のことを確認・実施してから作業に取りかかりましょう。

これを怠ると、設備トラブルや感電の恐れがあります!

インバータの設定を確認する

インバータには、モーターをどのように動かすのかといった制御内容があらかじめ設定されています。

例えばどれぐらいの速度で回転させるのかや、加速・減速の時間などですね。他にも細かい設定が「パラメータ」としてインバータに保存されています。

パラメータとは?

モーターをどう動かすかを決める設定のこと

この設定についてはインバータのメーカーによって表現が異なっていて、三菱電機であれば「パラメータ」、安川電機だと「定数」と表現されていたります。

インバータを交換した後にこの設定を行わないと、正常にモーターが動作しませんので、インバータを取り外す前に設定内容を確認し、メモをとるようにしましょう。

交換直後の設定を必ず確認しよう

設定を確認する方法は、大きく2通りあります。

インバータの表示で確認する

インバータを操作して項目を表示させることで、設定を確認する方法です。

例えば、三菱電機のインバータだと”Pr.4″の数値が”60″になっていると、「高速運転時は60Hzの速度で回転させる」という意味になります。

このように各項目に対してどのような数値になっているかを、一つ一つ見ていってノートなどにメモしていきます。

高性能なインバータになるほど項目が多くなりますが、面倒くさがらずに確実に行いましょう。

なべ
なべ

メーカーのホームページから項目の一覧表を印刷しておくと、何の項目にどのような設定がされているかが分かりやすいと思います

インバータの操作方法は各メーカーの取扱説明書で確認しましょう

専用のソフトウェアで設定を読み出す

各メーカーからはインバータを保守や設定に使える専用のソフトウエアをリリースしている場合があり、それを使うことでインバータの設定をパソコンに読み出すことができます。

設定項目を一つ一つ見ながらメモしなくても、一瞬で設定を読み出せるのが、このソフトウェアの大きな利点です。

大変便利なのですが、初心者の方には操作が難しいと感じる場合がありますので、最初は無理に使わず、慣れてきたら挑戦してみるのがおすすめです。

ひでくん
ひでくん

使いこなせるようになると、電流や電圧の波形を取ったりも出来るよ

電源を切って10分ほど放置

設定の確認が取れたらインバータの電源を切ります。

ただし、電源を切ったからといって、直ぐに取り外し作業に取りかかることもNGです。

先ほども触れたように、インバータには「コンデンサ」と呼ばれる部品が使われているのですが、このコンデンサは電気をためる特性を持っています。

つまり、インバータの電源を切っても、しばらくはコンデンサに電気が残っている状態になるため、直ぐに配線等に触ってしまうと感電の恐れがあるのです。

そのため、感電防止のために電源を切ることはもちろんですが、切ってから約10分ほど放置して、コンデンサの電気をしっかり放電してから作業に取りかかるようにしましょう。

なべ
なべ

インバータの電源ランプが点灯している場合は、消えるまでしっかりと待ちましょう

切った電源を誤って入れられないよう、ロックアウト等で処置をしておきましょう

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インバータの配線を開線する

さて、全ての準備が整ったところで、いよいよインバータを取り外していきます。

まだこの状態ではインバータに配線が接続されていますので、まずは配線から開線(電線を外していくこと)していきます。

インバータの開線の手順は次の通りです。

配線の状態を記録する

インバータには信号線や動力線、抵抗器などのオプション等が多数接続されています。

インバータのどの端子に何の線が接続されているか、1つ1つチェックしてノート等にメモしていきます。

カメラやiPad等で綺麗に撮影が出来そうであれば、写真を撮って記録しておくという手もあります。

ひでくん
ひでくん

信号線がコネクタになっている場合は、交換後にそのまま接続できる機種もあるよ

  • 短絡片の付き方なども確認しておこう
  • 線が2本同時に接続されている場合もある

配線を開線する

配線の状態を記録できたら、インバータから配線を取り外していきます。

作業中にビス等を落としてしまう恐れがありますので、ウエスやビニール等で養生しておくと無くなりにくくなり安心です。

特に信号線は線が細く、開線したときにマークチューブが抜けてしまうことがあります。もしマークチューブが抜けてしまいそうな場合は、ビニールテープ等で止めておくなどの処置をしておきましょう。

配線が全て開線できたら、邪魔にならないよう端の方によけておきます。

なべ
なべ

充電式の小形ドライバーがあれば楽に作業することもできます

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インバータ本体を取り外す

配線が開線できたら、インバータ本体を取り外します。

インバータは小さいものだと片手で持つことができますが、容量が大きくなるにつれてサイズも大きくなり、さらに重くなっていきます。

そのため、場合によっては2人で作業を行うなど、安全最優先で作業を行うようにしましょう。

インバータ本体を取り外した後はホコリで汚れている場合が多いため、ウエス等で清掃しておくことも忘れずに。

新しいインバータを取り付ける

用意した新しいインバータの取り付けを行います。

サイズが異なる等の理由で既存の取付穴と合わない場合は、ドリルやタップを使用して取付穴を作りましょう。

取付穴を新しく明ける場合は、次の点に注意してください。

新しいインバータをあてがってマーキングする

取付穴を明ける場合は、新しいインバータ本体を実際に盤内にをあてがって、ペン等で中板にマーキングする方法が一番確実です。

取扱説明書の外形図から測定してマーキングするという手もありますが、わずかなズレが後の取付に影響する可能性がありますので、出来れば現物を使って直接マーキングする方法をオススメします。

切粉が飛び散らないよう養生する

盤内はインバータ以外にも様々な電子機器が取り付けられています。飛び散った切粉が中に入ると故障の原因になる可能性がありますので、必ずビニールシート等で周囲を養生しましょう。

なお、穴を明ける箇所にドーナッツ状の磁石を付けて作業すると、磁石に切粉がくっついて飛び散りにくくなります。

ひでくん
ひでくん

盤作業をよく行っている業者さんの間でよく使われる方法だね

電線を痛めないようにする

穴を明ける箇所の周辺には、開線したインバータの線以外にも様々な配線が通っている場合がありますので、それらを傷づけないよう慎重に穴明け作業を行うようにしましょう。

穴明けを行う場合は、養生をしっかりと行いましょう

新しいインバータに結線する

新しいインバータの取付けが終わったら、配線を接続していきます。

基本的には、取り外すときにメモや写真で記録しておいた通りに、配線を元の位置に結線していけばOKです。

このとき、マークチューブの線番やキャップの色などをしっかり確認しながら、間違いのないよう丁寧に接続していきましょう。

なお、本記事の「段取り」の項でもふれましたが、信号線についてはフェルール端子で接続するケースが増えてきています。

新しいインバータの配線方法を事前に確認し、必要な材料をしっかりと揃えてから交換作業を行うようにしてください。

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なべ
なべ

配線ミスには十分注意してください!

電源側の線とモーター側の線を間違えて接続すると、インバータが故障する可能性があります

電源を入れて設定を行う

配線に誤りがないことをしっかり確認し、いよいよインバータの電源を入れます。

問題なくインバータの表示が確認できたら、交換前に記録しておいた設定(パラメータ・定数等)をもとに、新しいインバータへ入力作業を行っていきます。

インバータの操作はボタンで操作するものもあれば、ダイヤルで数値を変えられるものもあります。

一通り入力が終わったら、もう一度最初から見直して誤りがないか最終チェックを行ってください。

ひでくん
ひでくん

出来れば2人以上でチェックできたら確実だね

試運転を行う

配線と設定に問題がないことを確認できたら、実際にインバータを交換したモーターを動かして試運転を行います。

万が一でも誤動作する可能性がありますので、必ず動かす前に安全確認を行いましょう。

特に、近くに人がいる場合は危険がないよう離れてもらうなど、しっかりと周知してから動かすようにしてください。

試運転時は、最初は少しずつ動かしながら、慎重に挙動を確認しましょう

試運転で確認する項目は以下の通りです。

モーターの動作方向は合っているか?

操作した方向にちゃんと設備が動いているか(モーターが回転しているか)を確認します。

配線を誤っていると反対方向に動作することがあります。

動く速度は正常か?

設定した速度通りに設備が動いているか、実際に目で見て確認します。

このとき、交換前の動作速度を把握している方にチェックしてもらうことで、違和感や微妙なズレにも気付きやすく、より確実です。

停止タイミングに違和感がないか?

通常の動作から停止させた時に、ちゃんと目的の位置で停止するかや、減速がスムーズに行われているかなど、停止時の動作や挙動も確認するようにしましょう。

設定が誤っていると、停止位置がズレたりオーバーランするすることもあるため、注意が必要です。

動作時の電流値は問題がないか?

動作の挙動に問題がないことを確認できたら、動作時の電流値に問題がないかも確認しておきましょう。

設定の中にはトルクブースト(立ち上がり時に一時的に電圧を上げて回転トルクを増やす機能)のように、数値が異なると交換前よりも電流値が高くなる場合がある設定項目も含まれています。

必ず動作時の電流値が正常かを確認して、著しい違いがあれば設定内容を再度見直すようにしてください。

なべ
なべ

電流値はクランプメーターやインバータ本体でも測定することができます

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交換後の試運転は納得いくまでしっかりと行いましょう

まとめ

以上、インバータの交換方法やポイント等についてお伝えしました。

インバータの交換作業は、ポイントさえ押さえておけば決して難しいものではありません。

ただし、安全確認や設定内容の把握、配線ミスの防止など、注意すべき点は多くあります

特に、配線や設定のチェック、交換後の試運転を丁寧に行うことが、トラブルのない立ち上げにつながる大切なステップです

一つひとつ手順を確認しながら進めれば、確実に作業ができるようになりますので、是非本記事を参考に実践してみてください。

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なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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