【どのモーターを選ぶ?】メーカー別の特徴・強み・選び方について分かりやすく解説
モーター(電動機)は工場内設備や産業用機械、プラント設備などあらゆるシーンで使われる重要な機器です。
ただ、一口にモーターと言っても、様々なメーカーが製造・販売しているため、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?

どのメーカーのモーターを選んだらいいのか、選定ポイントがよく分かりません。。。
モーターメーカーには、三菱電機や日立といった家電などでもお馴染みのメーカーから、住友重機械工業やニッセイ、海外メーカーのSEW-EURODRIVEから世界シェアトップをほこるニデック(日本電産)まで、とても数多くのメーカーが存在しています。
これらのモーターメーカーはそれぞれ特徴が微妙に異なるため、使用環境や用途に合わせたモーター選びが欠かせません。
この記事では、現場でよく使われる主要モーターメーカーの特徴をわかりやすく解説し、さらに用途や条件に応じた選び方についても詳しく紹介していきます。
最適なモーターを選ぶための参考として、是非ご活用ください。

モーターメーカーって本当にたくさん存在するから、確かにどれを選んだらいいか迷うよね〜

メーカーごとに得意分野や特徴がありますから、それぞれの”持ち味”を活かしたモーター選びが重要です
モーターのメーカー選びは何で重要なの?

“装置を動かす”という基本性能は、どのメーカーのモーターを選んでも同じですが、メーカーによって設計思想や耐久性、価格や制御のしやすさなどに違いがあります。
価格帯が異なる

スペック表記上は同じモーターでも、メーカーが異なると価格が異なるケースがあります。
例えば、ニッセイのモーターと住友重機械工業のモーターを比較すると、構造上の違いはあるもののニッセイのモーターの方が安い場合がほとんどです。
安いモーターが一概に悪いというわけではありませんが、耐久性など価格差にはそれなりの理由がありますので、用途や使用環境に応じて選定する必要があります。

同じ仕様でもメーカーによって価格にはかなり幅があるよ
得意分野が異なる

メーカーによって、得意とする分野や主力としている製品ラインナップが少しずつ異なります。
例えば、クレーンのように高いトルクや負荷耐性が求められるような機械においては、住友重機械工業やSEW-EURODRIVE、安川電機や富士電機等の産業用モーターがよく使われています。
また、製鉄所のように24時間365日過酷な環境で動いている設備では、住友重機械工業のモーターを見かける機会が非常に多いです。
このように、昔から選ばれてきたモーターメーカーはその分野で強みを持っていることが多く、必然的に採用している側も、設備の特性や条件に合わせてモーターメーカーを選んでいます。

得意分野や注力している製品群に合わせたモーター選びが大事ですよ
インバータとの相性が異なる

モーターの制御は、どのモーターを選んでも基本的には原理や制御方式は同じです。
しかし、モーターを制御するためのインバータが三菱電機製であるならば、モーターも三菱電機製を選んだ方が良いでしょう。
それは、三菱電機製のインバータが自社のモーター特性に最も最適化された制御を行うよう設計されているためです。
もちろん、他社のモーターを使用しても全く問題はありませんが、やはり自社製同士の組合せの方が動作は安定します。
特に、三菱電機特有の高度な制御方式(磁束ベクトル制御等)を使用する場合は、純正モーターの方が設定が簡単ですし相性もバツグンです。

このように、インバータやモーターのメーカーを統一しておくことで、制御のしやすさや運転の安定性が向上するだけでなく、トラブル発生時のサポートが受けやすいなど、様々なメリットがあります。

やっぱりモーターとインバータは同じメーカーの方が安定するよね
主要メーカーの特徴について

現場でよく使われる主要メーカーのそれぞれの特徴について解説していきます。
三菱電機
引用先:三菱電機株式会社(三相モーター トップランナーモーター)
モーターメーカーとしてまず最初に挙げられるのが三菱電機です。
三菱電機製のモーターは、一般的な三相モーターから減速機付のギアモーターまで幅広いラインナップがあり、小型機械からライン設備、少し大きな産業用機械まで様々なところで使われています。
特徴①:汎用性が高い
三菱電機製のモーターは耐久性と価格のバランスが良く、非常に汎用性が高いのが特徴です。
また、容量や減速比のバリエーションが豊富なことから、小型の機械から大型の設備まで幅広い用途に対応することが可能です。
特徴②:三菱インバータとの相性が良い
設備の速度制御で使われるインバータ、その代表的なメーカーの1つが三菱電機です。
その三菱インバータとの組合せは、やはり同じメーカー同士の方が相性がよく、制御の安定性が高いという特徴があります。
特徴③:ブレーキのメンテナンス性が高い
三菱電機製のモーターは自社ブレーキの「TB-A形」ブレーキと、大崎電業社の「ESBブレーキ」が採用されています。

どちらのブレーキもライニングの摩耗に応じてギャップ調整することができ、規定値以上にブレーキライニングが摩耗しても、ライニングだけを交換することが可能です。
調整には一定の技量が必要ですが、メンテナンス性の高さはメリットの1つです。
特徴④:旧型と新型とでは取付寸法が異なることが多い
既に生産中止になっている昔の三菱電機製モーターから交換するとき、取付寸法が合わないことが多いのが三菱電機製モーターの特徴でありデメリットの1つです。
また、同じシリーズだったとしても、ブレーキの種類が変わると取合寸法が変わるケースもあり、「取付穴の寸法は同じなのに、モーターの軸の位置が違う」ということが実際発生することもあります。
同じ三菱電機製で”後継機種”とうたわれていても、古いモーターとは取付互換性がないことが多いため、取替の前には十分な確認が必要です。

汎用性の高さは三菱電機最大のメリットですね
住友重機械工業
引用先:住友重機械工業株式会社 PTC事業部(製品一覧)
住友重機械工業製のモーターは、独自構造である「サイクロ減速機」を搭載しているモーターが特に有名で、その高い耐久性と信頼性には定評があります。

他にも、様々な用途に応じた減速機のバリエーションが有り、それぞれの減速機とモーターが一体化したギアモーターが選択できますので、装置の仕様や設置場所に合わせた構成を柔軟に選択することができます。
特徴①:独自構造による耐久性の高いつくり
住友重機械工業製ギアモーターの多くは、特許構造の「サイクロ減速機」や遊星歯車構造など、荷重分散によって歯車への負担を軽減する仕組みが採用されているため、一般的なギアモーターと比べても耐久性が高いのが大きな特徴です。
引用先:住友重機械工業株式会社(ベベル・バディボックス®減速機 4シリーズ)
引用先:住友重機械工業株式会社(ベベル・バディボックス®減速機 4シリーズ)
また、減速機の歯の強度を上げて大きな負荷容量を受けることができたり、衝撃荷重に耐えることができたりと、様々な耐久力アップの仕組みが施されています。
特徴②:減速機のバリエーションが豊富
住友重機械工業は減速機メーカーでもあるため、ギアモーターに組み合わせる減速機のバリエーションが非常に豊富です。
例えば、主力製品のサイクロ減速機をはじめ、遊星歯車式減速機や大型のパラマックス減速機など、小さなものから大きなものまで幅広くカバーしています。
さらに、サイクロ減速機では減速比が1:658,503という、とんでもなく大きなモデルもあり、超低速・高トルクが求められる特殊なニーズにも柔軟に対応できます。

これほど幅広い減速比のラインナップがあるのは住友ぐらいだね
特徴③:取付寸法が新旧でほとんど変わらない
住友重機械工業のギアモーターは新旧の取付寸法が変わっていないことが多く、昔のモーターから現行モーターへの更新時も、ほとんどの場合でそのまま取替ができるというメリットがあります。
例えば、約40年前に発売されたサイクロ減速機の200シリーズと、現行の6000シリーズとでは、取付寸法から定格トルクに至るまで完全互換となっており、周辺の改造を行わなくてもギアモーターの取替が可能です。

取替工事の時はいつも助かっています
特徴④:ブレーキギャップの調整がやりやすい
住友重機械工業のモーターブレーキは、一部の機種(FB-01A1、FB-02A1、FB-05A1)を除いて”調整用シムを抜いて”ギャップを調整するという構造を採用しています。
つまり、ナットの締め具合でギャップを調整するのではなく、シム(薄いスペーサ)を1枚ずつ抜いて隙間を縮めていくというやり方なので、均一なギャップ調整がしやすいというメリットがあります。
ただし、ブレーキライニングなど部品単体での販売はメーカーでは受け付けていないため、部品交換は専門のサービスに依頼する必要がある点は注意が必要です。
特徴④:価格が高い
住友重機械工業製のモーターは総じて価格が高めに設定されているのが特徴です。
これは、同社が大きな負荷や耐衝撃性を前提とした高耐久設計を採用していることに加え、独自構造による部品点数の多さや、高度な組立技術を必要とするためであると考えられます。
そのため、稼働率が低い設備や軽負荷の装置においては、性能を持て余してしまう可能性がありますので、オーバースペックにならないようコストとのバランスを考えて選定する必要があります。

住友のモーターの耐久性は様々な業界から高い評価を得ているよ
ニッセイ
引用先:オリムベクスタ WEBショップ(G3L28N20-MR08TNNTN)
ニッセイは減速機と歯車の製造を得意とする国産メーカーで、主にコンパクトでコストパフォーマンスに優れたギヤモーター作っているメーカーです。
そのため、クレーンなどの重負荷設備向けというよりも、小型の装置や設備に比較的多く採用されています。
特徴①:コストパフォーマンスに優れる
ニッセイのギアモーターは、同容量・同減速比の他メーカー製モーターと比べると、比較的安価に設定されているのが特徴です。
そのため、無人搬送車やコンベアなどの比較的負荷の軽い用途であれば、コストを抑えつつ十分な性能を発揮できる選択肢になります。
特徴②:新旧の取付け互換性に優れる
ニッセイ製のギアモーターも住友重工業製のギアモーターと同じで、古いモーターから現行後継機種に取り替える場合でも、特に改造する必要もなくそのまま取り付けが可能です。
特徴③:ホームページにある選定ツールが秀逸
ニッセイのホームページには、用途や使用条件を入力するだけで最適なモーターを自動で選定できる「選定ツール」が用意されていて、これが非常に秀逸です。
この選定ツールでは、初心者の方でも直感的に操作できるように作られているので、「あまり選定に自信がない」という方でも安心して利用できます。
また、選定に迷ったときには、メーカーの技術者の方にすぐ相談できるよう、お問い合わせフォームへのアクセスも分かりやすい位置に配置されています。
そのため、専門スタッフから的確なアドバイスを受けることができ、サポート面でも安心です。

自分たちで複雑な計算が必要ないのはうれしいですね
特徴④:小〜中容量のモーターラインナップに特化
ニッセイのギアモーターは、モーター容量が最大2.2kWまでと、あまり大きな容量のバリエーションがありません。
そのため、大容量を必要とする大きめの装置やクレーンなどの用途では、選定できる範囲がかなり限定されます。
一方、小容量の場合は15W〜90Wクラスのラインナップが豊富で、さらに減速機が1:1800という高減速比まで対応しています。

容量が15Wのモーターで、減速比が1:1800というのは凄いね
このように、ニッセイは小型〜中型の搬送装置や機械向けに特化した製品戦略をとっていて、その分野においては非常に高い競争力と大きな強みを持っています。

バッテリー電源で駆動できるモーターもありますよ
ブレーキギャップの調整は1回のみ
ニッセイ製のモーターブレーキは、住友重機械工業のブレーキと同じように、シムを抜いてギャップを縮めるという調整方法を採用しています。
ただし、ニッセイ製のモーターブレーキにはシムが1枚しか入っていないため、ギャップ調整は1回しかできません
また、ブレーキ部品を単品で購入できる機種が限られているため、次に規定値を超えてしまうと再調整ではなくブレーキ一式の交換が必要になります。
引用先:株式会社ニッセイ(【FAQ0069】ブレーキ部品を購入できますか。)
なお、モーター区分が「防水」の機種については、単品販売もセット販売も受け付けていないため、メーカー修理扱いになる点は注意が必要です。

最近は各社ブレーキの部品供給が厳しくなってきているね
SEW-EURODRIVE(オイロドライブ)
引用先:SEW -EURODRIVE JAPAN(Kシリーズ ヘリカル・ベベルギヤ減速機)
SEW-EURODRIVE(以下 SEW)は、1931年に設立されたドイツに本社を置く海外のモーター・減速機メーカーです。
日本国内では「SEW-EURODRIVE Japan」が販売・技術サポートを担当しており、静岡県磐田市に本社・組立工場、そして京都にも組立工場があります。
SEWは技術力とその信頼性が世界中で高く評価されていて、物流業界や食品関係だけでなく、クレーンなどの高負荷装置まで幅広い用途に採用されています。
特徴①:高い耐久性と堅牢なつくり
SEWは世界でも評価の高い減速機メーカーというだけあって、ギアモーターとしての耐久性には定評があります。
最近では、稼働率の高い生産ラインやクレーンなどの高い耐久性が要求される用途への採用も増えてきています。
特徴②:短納期化に寄与する独自の”モジュールシステム”
“海外メーカー”と聞くと、どうしても「納期が掛かるんじゃないの?」思われがちです。
しかし、SEWの場合は独自の”モジュールシステム”を確立していて、製品の組立工程を完全標準化しています。
さらに、日本国内の磐田工場・京都工場にはドイツから部品が毎週定期的に補充されているので、常に部品が潤沢に在庫されています。
この仕組みによって、標準品であれば国内メーカーと同等の納期で出荷が可能で、標準納期は約2週間とされています。
ただし、取寄部品がある場合やカタログに掲載されていない特殊仕様の製品については、ドイツの本社工場から部品を取り寄せる必要があります。
そのため、約4ヶ月前後の納期が掛かる点については注意が必要です。

空輸料をプラスすれば、納期を約2ヶ月短縮することができます
特徴③:ギアモーターのバリエーションがとても多い
SEWのモーターは、減速機とモーターの種類がとても豊富で、用途に応じたベストな構成を選びやすいという特徴があります。
減速機のシリーズだけで「R」・「K」・「F」・「S」・「W」の5種類あり、モーターの容量も0.12kW〜355kWまでラインナップされています。
さらに、温度センサーやエンコーダなどのオプションも用意されているなど、組合せのパターンはまさに”星の数ほど”種類があると言っても過言ではありません。
装置の種類や環境、使用用途などに柔軟に対応できる点がSEWの強みであり、大きな特徴の1つとなっています。

バリエーションの多さは、減速機メーカーであるSEWならではだね
特徴④:メンテナンス性が高い
SEW性のモーターはメンテナンス性が非常に高いのも大きな特徴です。
モーターの銘板を写真に撮って指定すれば部品単体で入手でき、公式ホームページ上で公開されている取扱説明書には分解や組立の手順が詳しく掲載されています。
そのため、点検や調整、部品交換などが現場でスムーズに行えますので、”モーターを外してメーカー送り”といった手間が発生せず、設備停止の時間も最小限に抑えることが可能です。
もちろん、調整や分解は経験をある程度積んだ人が行う必要がありますし、海外メーカーということもあって若干国内メーカーよりも”クセ”はあります。
それでも、メンテナンス性や情報公開度の高さ、しっかりとした部品供給体制など、現場で使用する私達にとってはありがたいメーカーの1つです。

僕も普段からSEWのモーターを点検していますが、メンテナンスは非常にしやすいと感じています
特徴⑤:ホームページが若干使いにくい
SEWはホームページの構成や表現に少し”クセ”があって使いにくい印象です。
もちろん日本語には対応しているのですが、「インダストリー」や「コンフィギュレーター」など、普段あまり馴染みのないカタカナ用語がかなり出てきます。
各種ドキュメントやCADデータ、選定ツールなど内容自体は非常に充実していますので、慣れてしまえば欲しい情報を入手することができますが、初心者の方など最初のうちは少し手間取るかもしれません。

ホームページからの情報入手が難しい場合は、メーカーや代理店の方に言って対応してもらおう
安川電機(安川オートメーション・ドライブ)
引用先:安川オートメーション・ドライブ株式会社(一般産業用電動機|誘導電動機中容量 FYTシリーズ)
安川電機はサーボモーターやインバータ、ロボットなどを製造・販売しているメーカーで、産業用モーターについてはグループ会社の「安川オートメーション・ドライブ(以下 安川)」が手掛けています。
特徴①:大型の産業用モーターに強い
安川のモーターは、岸壁のガントリークレーンなど大型設備に使われるモーターを得意としていて、37kWのモーターから8,000kWの大容量高圧モーターまでカタログに掲載されています。
0.75kW〜という小型のモーターを作っていないわけではありませんが、「PMモーター(永久磁石同期モーター)」という、一般的な誘導モーターとは仕組みが異なるタイプの製品が中心となっています。
そのため、三菱電機やニッセイのように汎用モーターとして幅広く使える製品ラインナップではなく、高効率かつ高性能が求められる用途もしくは大型装置向けのモーターに特化しています。
特徴②:安川の高性能インバータとの相性が良い
業界では安川のインバータは性能の高さや省エネ性能に定評があり、特にガントリークレーンといった大型装置や製鉄所の圧延設備などの速度制御に広く採用されています。
当然、同じ安川製のインバータとモーターを組み合わせることで、最も効率的で制度の高い制御を行うことができ、長時間連続稼働のプラント設備や停止が許されない港湾設備など、過酷な環境下で稼働している設備の運転に寄与しています。

安川電機のインバータは高性能かつ信頼性の高さに定評があります
特徴③:コスト優先の汎用設備には向かない
安川製のモーターは大型かつ過酷な環境下での使用においては、その性能を遺憾なく発揮することができます。
一方で、汎用コンベアといった軽負荷設備においては、コストが優先されるケースも多く、そのような場合にはあまり向かない選択肢となります。
これは、安川のラインナップが大容量モーターもしくは、精密な動作が要求される用途に最適なPMモーターを主力としているためです。
特別な理由がない限りは、三菱電機などの汎用モーターを選択する方がオーバースペックにならず、コストを抑えることができるでしょう。
ニデック(旧日本電産)
引用先:ニデックテクノモーター株式会社(プレミアム効率(IE3)モータシリーズ)
ニデックは、小型の精密モーターにおいて世界シェアトップをほこる、日本の総合モーターメーカーです。
その商品ラインナップは多岐に渡り、車や家電製品に至るまで様々な製品に使われています。
もちろん産業用モーターも作っていて、グループ会社の「ニデックテクノモーター」が開発・製造を手掛けています。
特徴①:現場のニーズに合わせた無駄のないラインナップ
ニデックテクノモーター(以下 ニデック)のモーターラインナップは、一般的な装置によく使われる0.2kW〜55kWの容量帯が中心です。
もちろん、電源電圧や極数、ブレーキの有無といったバリエーションも豊富で、現場の設備仕様に柔軟に対応できる汎用性の高い製品構成となっています。
一方で、ニーズが限られる大容量モーターのラインナップは無く、主に小型から中型設備向けに特化している印象です。
このように、ニデックはニーズが限られる大容量モーターをラインナップから外し、ニーズの高い小〜中容量モーターに絞ることで、自社の強みを活かした無駄のない生産体制を築いています。
特徴②:防爆モーターのバリエーションが豊富
ニデックは他メーカーと比べて、防爆形モーターのバリエーションが非常に豊富です。
インバータ駆動用はもちろんのこと、他メーカーではほとんど見られない防爆形ブレーキ付モーターもしっかりとラインナップされています。

ブレーキ付防爆形モーターって、つくっているメーカーが限られるんだよね〜
また、ホームページのカタログには掲載されていませんが、防爆形ブレーキ付かつインバータ駆動にも対応したモーターも製作していますので、もし他メーカーを探してもなかなか見付からないというときは、ニデックに相談してみるといいでしょう。

「ブレーキ付」と「インバータ駆動」を両立しているのはニデックぐらいです
特徴③:ギアモーターのラインナップが少ない
ニデックテクノモーターのラインナップには、減速機とモーターが一体化したギアモーターの展開がありません。
そのため、減速機が必要な場合は、他社製の減速機を別途用意して組み合わせる必要があります。
一応、グループ会社である「ニデックドライブテクノロジー」にて、「コロネット減速機 ERシリーズ」というギアモーター製品が用意されていますが、バリエーションが少なく、汎用性が高いとは言い難いのが実情です。
このため、ユーザーが用途や条件に応じて、ニデックの産業用モーターと組み合わせる減速機を自由に選定できるというメリットがある一方、一体型と比べて省スペース化が図りにくいなどのデメリットも存在します。
その他のメーカー
その他にも様々なメーカーがモーターをつくっています。各社の特徴は次の通りです。
東芝
- ブレーキ付モーターやギアモーター、防爆モーターなどバリエーションが豊富
- 20,000kWという超大容量モーターの製作も可能
富士電機
- 様々なバリエーションのモーターを豊富にラインナップ
- ブレーキ付ポールチェンジモーターをまだ製作している数少ないメーカーの1つ
- 比較的大容量の高圧モーターも手掛けている
日立
- 様々なバリエーションのモーターを豊富にラインナップ
- クレーン用モーターを標準ラインナップ

どのメーカーも昔から大型クレーンのモーターを手掛けてきているので、産業用モーターには強いですね
モーターメーカーの選び方について

ここまでご紹介した各メーカーの特徴を踏まえて、場面毎にどのメーカーが適しているのかを解説していきます。

モーター選びの参考にしてみてね
汎用性・コストを優先したいとき
コンベアなどの汎用装置への使用やコストを優先したい場合には、三菱電機もしくはニッセイが適しています。
この2社は汎用性とコストのバランスがとても優れているだけなく、メンテナンス性も比較的高いため、様々なシーンで使いやすいメーカーです。
自動クレーンやAGV等の装置にもよく採用されているメーカーですので、まずはこの2社から検討してみてください。
高負荷・連続運転・耐衝撃性を重視したいとき
化学プラントや製鉄所などの過酷な環境であったり、天井クレーンや圧延装置などの高負荷や連続運転等の条件で使用するモーターを選定する場合は、住友重機械工業もしくはSEWが強い味方となってくれます。
この2社は上記のような環境下での信頼を勝ち取ってきたメーカーであり、独自構造・システムによって、高い耐久性と信頼性を実現しています。
また、減速機のバリエーションが非常に豊富であることから、様々な用途に使いやすいというメリットもあります。
初期のコストが高めになる可能性はありますが、運用コストやダウンタイム削減等を考えると長期的に見ればコストパフォーマンスに優れた選択肢となるでしょう。
現場のメンテナンス性の高さを優先したいとき
現場のメンテナンス性を重視したい場合は、軽負荷設備であれば三菱電機もしくはニッセイ、高負荷設備であればSEWに軍配が上がります。
これらはサービスパーツとして部品を単品もしくはユニット単位で購入できるため、現場での部品交換などの補修がしやすいというメリットがあります。
他メーカーのモーターでも、もちろん取り外してメーカーに遅れば修理対応は可能です。
しかし、取付け・取外しの手間や長期間の設備停止などを考えると、現場で部品交換が行いやすいメーカーを選択する方が、結果的に保全コストの削減や稼働率の向上につながります。
インバータと組み合わせて高精度な制御をしたいとき
インバータとモーターを同じメーカー同士で組み合わせることで、より精度の高い速度制御が可能となります。
一般的によく使われるインバータメーカーは三菱電機・安川電機・富士電機・日立などが挙げられ、これらと同メーカーのインバータ駆動用モーターとを組み合わせることで、インバータとモーターの性能を最大限引き出した運転が実現できます。
防爆形モーターを探しているとき
防爆モーターは各メーカー少なからずラインナップはありますが、最もバリエーションが豊富なのはニデックです。
ニデックは「インバータ駆動用」・「ブレーキ付」のラインナップが他社よりも多く、更にこの2つの仕様に両方とも対応している「防爆形ブレーキ付インバータ駆動用モーター」をつくっているメーカーは現状ニデックだけです。(なべ調べ)
各社が防爆モーターのバリエーションを絞り込む傾向にあるなかで、これだけ幅広いバリエーションを維持してくれているのは、非常にありがたい存在と言えます。
大型設備用のモーターを探しているとき
大型設備用モーターは安川電機・東芝・富士電機・日立などが得意としている分野です。
これらのメーカーは、いずれも港湾のガントリークレーンをはじめ、製鉄所設備や化学プラント設備などに使われるモーターを手掛けてきたメーカーたちであり、現在も第一線で活躍しています。
どのメーカーを選んでも、同仕様であれば基本性能や信頼性に大きな差はなく、いずれも長時間の連続運転や高負荷環境に十分耐えうる品質を備えています。

モーターのメーカー選びも奥が深いですね
まとめ

以上、各モーターメーカーの特徴や強み、選び方について解説しました。
どのモーターメーカーも品質は確かであり、どれを選んでも高いパフォーマンスを発揮してくれます。
しかし、これまで技術を培ってきた分野が微妙に異なるため、どのような設備でどのような条件下で使うのかを、明確にしたうえで選定することが非常に重要です。
本記事が今後のモーター選びの参考になれば幸いです。
- 汎用性・コストを優先
- 三菱電機
- ニッセイ
- 汎用性・高耐久性を優先
- 住友重機械工業
- SEW-EURODRIVE
- 現場のメンテナンス性を優先
- 三菱電機
- ニッセイ
- SEW-EURODRIVE
- 自社インバータとモーターの組合せ
- 三菱電機
- 安川電機
- 富士電機
- 日立
- 防爆モーターのバリエーション優先
- ニデック
- 大型設備用に強いメーカー
- 安川電機
- 東芝
- 富士電機
- 日立

















