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【サイクロ減速機とは?】特徴とメリット・デメリットについて解説

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様々な減速機を各メーカーが作っていますが、サイクロ減速機は住友重機械工業による独自機構の減速機です。

一般的な減速機は平歯車を組み合わせたものがほとんどですが、サイクロ減速機は平歯車を使用していません。

この記事では、そんな住友重機械工業製サイクロ減速機の特徴とデメリット・デメリットについて解説していきます。

なべ
なべ

サイクロ減速機は普通の減速機にはない特徴やメリットが沢山ありますよ。

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一般的な減速機の構造

一般的な減速機は以下のような構造が多いです。

引用先:SHINE WEI ENT(減速機的工作原理、 減速機 構造與常見類型)

黄色の歯車が入力軸で青色の歯車が出力軸になります。

入力軸には小さい歯車が付いており、その歯車で隣の大きな歯車を回すことで1段減速します。更にその歯車軸で出力軸の大きな歯車を回すことで2段減速し出力しています。

このように入力軸から出力軸まで小→大→小→大・・・という順番で歯車のサイズを変えて減速させているのが一般的な平歯車減速機の構造になります。

サイクロ減速機の構造

サイクロ減速機の構造は以下のようになっています。

引用先:住友重機械工業(サイクロ減速機の特長)

見て分かるとおり平歯車形の減速機と違ってかなり複雑な動きをしていますね。

部品の組み合わせとしては以下のような仕組みとなっています。

引用先:住友重機械工業(サイクロ減速機の特長)

高速軸(モーター入力軸)が回されることによって偏心体軸受が回転し、外ピン内を2つの曲線板が偏心しながらクランクシャフトのように回転します。その曲線板の穴に内ピンが挿入されており、この2つの曲線板の回転力によって、内ピンが取り付いている低速軸が回転するという仕組みです。内ピンと外ピンはそれぞれローラー付きなので、よりスムーズに回転を伝えることが可能となっています。

※アクリル板で作られたサイクロ減速機模型の動画もありましたのでご参考までに貼り付けておきます。

サイクロ減速機の特徴について

サイクロ減速機は以下のような特徴をもっています。

高減速比のバリエーションが豊富

サイクロ減速機は非常に幅広い減速比のバリエーションがあり、最大1:658503のモデルまでラインナップされています。

僕も1:1003の減速比のサイクロ減速機を昔使ったことがありますが、それよりも遙かに高い減速比のモデルも数多く存在します。

これだけのバリエーションがあると設計者の方はとても助かるのではないでしょうか。

コンパクトなサイズ

通常の平歯車形減速機だと減速比が増えるとサイズが大きくなりがちですが、サイクロ減速機の場合は1段形でも最大1:119と高い減速比を得ることができます。

つまり、減速比が高くなってもあまり減速自体のサイズが変わらないということですね。

高減速比とコンパクトサイズの両立がサイクロ減速機の大きな特徴と言えます。

長寿命で壊れにくい

通常の平歯車形減速機だと歯車同士が噛み合って動力を伝達しますが、この場合噛み合い率が少ない(噛み合っている歯が限られている)為、1つの歯に掛かる力が大きくなり、折損などの不具合が発生する可能性があります。また、歯面同士が滑り接触であることから摩耗も起きやすいデメリットもあります。

サイクロ減速機は通常の歯車と違って、歯面同士が転がり接触であることと歯全体で荷重を分散する構造である為、壊れにくく長寿命な減速機を実現しています。

引用先:住友重機械工業(サイクロ減速機の特長)

部品には「高炭素クロム軸受鋼」というベアリングにも使われている耐摩耗性に優れた素材を採用しており、これが更なる頑丈さや長寿命化に一役買っています。

モーター付きとモーター無し(レデューサ)から選択できる

サイクロ減速機はモーター付きで使うことが多いですが、減速機だけのモデル(レデューサ)も選択することが可能です。

引用先:MonotaRO(サイクロ減速機 6000シリーズ レデューサ)

様々なシーンに合わせてサイクロ減速機の選定が行えます。

サイクロ減速機のメリット

サイクロ減速機のメリットについてお伝えします。

高減速比かつコンパクトサイズ

サイクロ減速機の特徴でもお伝えしたとおり、幅広くかつ高減速比な減速機なのにサイズが非常にコンパクトであるという点です。

様々なバリエーションから目的に合った製品を見つけやすいという点が、サイクロ減速機の大きなメリットの1つです。

過酷な現場でも壊れにくい

サイクロ減速機はその特殊な構造からとても長寿命で壊れにくい減速機です。

僕は昔とある製鉄所の中で保全業務に従事していたのですが、そこで使われていた減速機付きモーターはほとんどがサイクロ減速機付きモーターでした。

製鉄所は24時間365日フル稼働で、ダウンタイム(不具合等で停止した時間)を分単位で管理されるとても過酷かつ厳しい現場です。

サイクロ減速機がいかに信頼性が高いか、製鉄所で沢山採用されているという事実が物語っているのではないでしょうか。

実際、サイクロ減速機が故障したという不具合は1件しか発生しませんでした。

取付互換性が高い

サイクロ減速機は実に60年以上の歴史があり、何度もモデルチェンジを行っていますが、特に80番シリーズ(1980年以降)から現行機種(6000番シリーズ)にかけての取付互換性が高いです。

他メーカーの減速機付きモーターは、モデルチェンジするとコンパクトになり取付互換性がないケースがあります。

実際、昔の設備の減速機付きモーターを交換するとき、他メーカーのものはそのまま取り付けが出来ず改造が必要な場面に多々遭遇しました。

サイクロ減速機の場合は20〜30年ぐらい前の機種を交換するとなったとき、仕様さえ同じであれば現行機種がそのまま取り付けられるケースがほとんどでした。

この取付互換性の高さもサイクロ減速機を選択するうえでの1つのメリットになります。

ただし、完全互換ではないので取替作業を行う前に必ず取付互換を確認して下さい。

サイクロ減速機 新旧互換選定はこちら

サイクロ減速機のデメリット

メリットの多いサイクロ減速機ですが、少なからずデメリットも存在します。

価格が高い

同仕様(容量・減速比が同じ)の他メーカーのものと比べて価格が高いです。肌感覚で大体1.2〜1.5倍ぐらいの価格差があります。

このあたりは信頼性とのトレードオフになります。ですが、価格差に見合う価値がサイクロ減速機にあると僕は思います。

分解修理はユーザー側では厳しい

サイクロ減速機が故障したとき、分解して中を見たことがありますがピンのローラーがバラバラになって何が何だか分からなくなりました。

サイクロ減速機はその複雑な構造から、分解して修理をするといったことは出来ないと思った方が良いでしょう。

ベアリング交換など、減速機内部のメンテナンスはユーザー側では行わず、修理は必ず代理店を通じてメーカーに依頼するようにして下さい。

ブレーキ部品なども単体ではメーカーから買うことは出来ません。ブレーキライニングの摩耗でブレーキギャップの調整が限界値まで近づいたら、メーカーに修理を依頼する必要があります。

入力軸の回転方向が出力軸では逆になる。

デメリットと言うよりは注意点になりますが、特にレデューサ(減速機のみ)を使用する時は1段形の場合、入力軸の回転方向に対して出力軸の回転方向が逆になります。

新規でレデューサを使用する場合は特に回転方向に気を付けて下さい。

サイクロ減速機は設備の強い味方

以上、サイクロ減速機について特徴やメリット・デメリットについてお伝えしました。

住友重機械工業のサイクロ減速機は国内生産が80年を超え、日々進化を続けています。

その長い歴史と信頼性から、国内の減速機シェアは60%以上をほこっているそうです。

確かに住友製のサイクロ減速機は壊れにくく、今までサイクロ減速機が故障したという事例はほとんど経験していません。

過酷な現場の設備を安定的に稼働させていくためにも、サイクロ減速機の採用を検討されてみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
6年前から営業職兼務になり、営業から設計・製作・工事・回収までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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