施工技術

【絶縁トロリーとは?】特徴や仕組み、メンテナンスの方法について解説

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絶縁トロリーは産業用機械においてとても重要な役割を果たしている給電装置です。

レール上を走行しているクレーンや搬送台車など、動く移動装置へ電気を供給するために幅広い業界で使われています。

多くのシーンで活用されている絶縁トロリーですが、安全かつ安定的な機能を維持するためには、定期的な点検・補修が不可欠です。

この記事では、絶縁トロリーの特徴や仕組みに触れつつ、日々のメンテナンスをどのように行えば良いかを解説していきます。

なべ
なべ

絶縁トロリーは電源供給を担うためにとても重要です。ポイントを押さえてメンテナンスをしっかり行いましょう

トロリーとは?

トロリーとは電車やクレーンなどの移動する装置に、電気を給電するために用いる線のことを言います。

引用先:JRTT 鉄道・運輸機構(電車線)

トロリーはトロリー線とも裸トロリーとも呼ばれ、電気を流せるように銅などの金属で作られています。このトロリーから移動装置に対して電気を供給します。

一方、移動装置側にはトロリーから電気を受け取るために集電装置と呼ばれる部品が付いています。電車の天井についているパンタグラフがそうですね。

このパンタグラフがトロリーに接触し続けることで、トロリーからパンタグラフを通った電気が移動装置の電源として使われます。

引用先:新晃電機株式会社(集電装置)

ちなみに天井クレーンで裸トロリーを使う場合は、上図のようなホイールタイプの集電装置を使うことが多いです。ホイールタイプについても、ローラーがトロリー線に接触し続けることでトロリー線から電気を集電します。

これがトロリーと集電装置の仕組みです。

絶縁トロリーとは?

絶縁トロリーとは、電気を供給するためのトロリー線を絶縁物で覆ったもののことを言います。

引用先:古河電工パワーシステムズ株式会社(絶縁トロリー)

写真のように、電気を供給するトロリーの周辺がオレンジ色の樹脂性絶縁被服で覆われているのが最大の特徴です。

絶縁トロリーは導体の周辺全てを絶縁物で覆っているわけではなく、集電装置を差し込む部分だけ隙間が空いています。

引用先:住友電工株式会社(製品ラインナップ)

一方、集電装置の先端にはブラシ(シュー)と呼ばれる金属部品が付いており、このブラシは移動装置本体の電源側とケーブルで接続されています。

引用先:デンザイ工業株式会社(絶縁トロリー交換部品)

このブラシを専用のアームに取り付けて、スプリングの力でトロリー部分に押しつけるように接触させることで、絶縁トロリーから電気の供給を受けることができるようになります。

これが絶縁トロリーを使った電気供給の仕組みになります。

絶縁トロリーのメリット

裸トロリー線と比べて絶縁トロリーには次のようなメリットがあります。

感電リスクを低減できる

絶縁トロリーの最大のメリットと言っていいのが、この感電リスクを低減できるという点です。

裸トロリー線は電気を供給する金属導体がむき出しの状態であるため、触った瞬間にほぼ感電してしまいます。

絶縁トロリーの場合はトロリー線が絶縁物に覆われているため、不意に触れてしまったとしても感電することがほとんどありません。

設置場所が限定されない

裸トロリー線は金属導体がむき出しのため、容易に人が近づける位置に取り付けることは安全上好ましくありません。

その為、人が近づけない高所や地下に接地されることが一般的です。

設置場所が人が近づきにくい場所だと、高所作業車が必須になるなどその場所に行くだけでも相当な労力が掛かります。

絶縁トロリーの場合は感電リスクが非常に低いため、高所や地下に限定されず様々な箇所に設置することができます。施工やメンテナンスがしやすいところに設置できるのもメリットの一つです。

省スペースで設置できる

裸トロリー線の場合は金属導体がむき出しの状態であるため、建物との間や線と線の間など、一定以上の間隔を空けて設置する必要があります。

絶縁トロリーの場合は、導体同士の間隔が狭く設置できるほか、裸トロリーのような碍子も必要ないため、省スペースで設置することが可能となります。

引用先:デンザイ工業株式会社(絶縁トロリー)

3本組や6本組など、用途に応じて必要な本数が組品になっているものを選択することもできます。

絶縁トロリーの製造メーカについて

各社が出している絶縁トロリーのラインナップや特徴については以下の通りです。

古河電工:セグラ

引用先:古河電工パワーシステムズ株式会社(絶縁トロリー)

古河電工パワーシステムズ株式会社が製造している絶縁トロリーである「セグラ」シリーズです。

古河電工のセグラシリーズは、絶縁トロリーの1本の長さが3m〜6mの短い定尺物であることが特徴で、必要な長さ分をユーザー側でジョイントして使用します。

そのため、1本ものの絶縁トロリーと比べて施工の際にジョイントの手間が増えますが、施工後に追加で延長したいといった場合でも柔軟に対応することができます。

また、絶縁トロリーの途中部分だけを不具合等で交換したいといった場合でも、その場所だけ切り離して交換できるので、施工後のメンテナンス性が高い製品となっています。

セグラシリーズには容量や用途に合わせて4種類(セグラA・セグラU・セグラ8・セグラS)の中から選択できます。

プロテリアル:タフトロ

引用先:株式会社プロテリアル(絶縁トロリー・トロリーバス・剛体トロリーバー)

株式会社プロテリアルが製造している「タフトロ」シリーズです。昔は日立タフトロと呼んでいましたが、日立金属からプロテリアルに社名が変わりました。

タフトロの絶縁トロリーは基本的に1本もので使用することを前提に作られており、M形なら標準60m、E形なら標準100m、F形なら標準150m巻まで、必要な長さを最初から指定して購入する必要があります。

1本もののメリットは、ジョイントタイプのように途中を接続する手間がないので、施工の工数を削減できるという点です。また、M形の場合は他線一括式であるため、敷設したい極数を同時に施工できるという点も工数削減に繋がります。

反面、施工した後で途中部分に不具合が発生した場合は、まるまる1本交換しなければならないというデメリットがあります。

ただ、タフトロの場合は古河電工のセグラと同じく、3m定尺のSバーとLバーというジョイントタイプもあるので、後々のメンテナンス性や増設などの柔軟性を考慮して、ジョイントタイプを選ぶことも可能です。

タフトロはかなりバリエーションが多いのが特徴ですね。

パナソニック:トロリール

引用先:パナソニック株式会社(FAダクト:絶縁トロリー)

家電などでも有名なパナソニックも絶縁トロリーを作っています。

パソニックもプロテリアルと同様非常に幅広いバリエーションの絶縁トロリーがラインナップされており、1本ものの張力タイプとジョイントタイプの非張力タイプ、現場のニーズに合わせて最適なものを選択することが可能です。

住友電工:スミトロリー・スミロング

引用先:住友電工株式会社(絶縁トロリーの特徴)

住友電工の絶縁トロリーは定格電流のラインナップが150Aからと大容量に特化しているのが特徴で、耐熱形や耐食形(スミトロリーのみ)など過酷な現場でも対応できるようバリエーションも豊富となっています。

6m定尺の「スミトロリー」は定格電流が150Aから1,000Aまでをカバーしており、「スミロング」は定格電流が150A〜300Aまでですが、350m巻の長尺ものを選択することができます。

クレーンなどの大きな設備への移動給電に適した絶縁トロリーと言えるのではないでしょうか。

絶縁トロリーのメンテナンスについて

絶縁トロリーは長期的な安定稼働のためにも定期的な点検・適正な処置が不可欠です。

是非以下のことをチェックして、異常があれば直ぐに是正するようにしてください。

尚、点検・修理の前には必ず電源を遮断し、検電してから作業を行うようにしましょう。

また、電源を第三者が無断で投入する恐れもありますので、勝手に投入されないよう表示や処置を行っておくことも非常に重要です。

絶縁トロリーの点検

絶縁抵抗値は正常か

絶縁トロリーは導体がむき出しになっている部分が少なからずありますので、周囲のホコリや湿気などの影響によって絶縁抵抗値が左右されやすい特徴があります。

特に環境の悪い現場や、敷設距離が長い設備などは顕著にその傾向が現れます。

絶縁抵抗値の測定は定期的に行うようにしましょう。

合わせて読みたい
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絶縁トロリーに著しい汚れがないか

絶縁トロリーの表面や導体部分に著しいホコリや汚れがあると、接触不良を起こしたり相間短絡を起こす可能性があります。ホコリは刷毛などでなるべく落とし、汚れはウエス等で拭き取るようにしましょう。

尚、絶縁トロリーの表面に付着しているホコリはブラシの摩耗粉なので、防塵用のマスクを装着したうえで清掃をするようにしてください。掃除機を使用しても良いと思います。

絶縁トロリーの表面にスパーク痕がないか

絶縁トロリーの導体表面(ブラシと接触する部分)にはまれにスパーク痕が発生していることがあります。その場合はペーパー等で表面を軽く磨いて綺麗にしてください。

あまりにひどい状態の場合は、絶縁トロリーの交換も視野に入れてください。

絶縁トロリーの表面に腐食がないか

塩分雰囲気中にある絶縁トロリーについては、導体表面が腐食して白くなっていることがあります。これがひどくなってくると、その箇所を通ったときにスパークが発生したり瞬停したりします。

この場合についても、導体表面をペーパーで磨くなどして腐食部分を除去してください。

耐食形を使用するなど、事前の対策も重要です。

絶縁トロリーに蛇行がないか

特に非張力タイプ(途中でジョイントするタイプ)の絶縁トロリーは、夏の暑い時期になると蛇のように曲がったりうねったりすることがあります。

中の導体が熱で伸びてしまうためですね。

集電装置側に曲がるぶんには外れたりすることは有りませんが、反対方向に曲がってしまうと、その箇所を通るときにブラシが外れてしまうことがあります。

もしそのような状態になっていたら、支持する箇所を増やすなどの対策を行う必要があります。

長い距離を非張力タイプで給電している場合には、夏の時期に注意してください。

絶縁トロリーに著しい垂れ下がりがないか

張力タイプの場合は両端から引っ張って張力を掛けていますが、支持部分の緩みやスプリングのへたりなどにより、全体が垂れ下がってくることがあります。

著しい垂れ下がりが確認できたら、支持部分の緩みの確認やスプリングの張り調整を行ってください。

絶縁トロリーのジョイント部にガタがないか

ジョイントタイプの絶縁トロリーは、ジョイント部分が揺るんだりガタが発生したりしていることがあります。

過去に僕の現場で、古河電工製のセグラS(ピンで接続するタイプ)の結合部分にガタが発生して給電不良を起こしたことがありました。

ジョイント部分で熱が発生して絶縁体が変形してしまっていますね。

ガタつきや動いたあとがないかなど、できる限りチェックしてください。

絶縁トロリーの絶縁体に割れがないか

絶縁トロリーの絶縁体は樹脂でできているため、何か硬いものが当たったりすると割れることがあるほか、長期間の使用による経年劣化で割れてくる場合もあります。

絶縁体が割れると導体部分が露出してしまう可能性があり、感電のリスクが高まってしまいます。

また、絶縁体は感電防止の役割以外にも、集電装置のブラシをガイドするレールの役割も担っています。

そのため、絶縁体が割れているとその部分からブラシが外れてしまい、単相運転や瞬停などの不具合が発生することがあります。

割れが発生している絶縁トロリーは早めに交換しましょう。

尚、パナソニックのトロリールの場合、部分的に補修することが難しい張力タイプの補修パーツとして、「シース用補修カバー」というものが売られています。

引用先:MonotaRO(シース用補修カバー)

このような補修パーツを使えば一時的に凌ぐことは可能ですが、経年劣化による割れの場合は至るところで割れが発生します。早めの一式更新を検討してください。

絶縁トロリーの両端に異常がないか

絶縁トロリーの両端は張力タイプだと引っ張り金具、非張力タイプだとゴムなどのカバーが取り付いています。

まれにこの部分が割れたり破れたりして、導体部分が露出していることがあります。

過去に非張力タイプの絶縁トロリーバーの先端に付いていたゴム製のキャップに穴があいており、その部分に機械部品を接触させてしまい地絡が発生したことがあります。

意外と見落としがちな部分ではありますが、絶縁トロリーの先端は樹脂の絶縁体で守られていない部分になります。必ずチェックするようにしてください。

集電装置の点検

集電装置にガタや緩みがないか

集電装置は移動装置と一緒に動くため、負荷もそれなりに掛かります。長年使用していると可動部の摩耗やガタつき、取付部の緩みなどが発生する可能性がありますので、定期的に点検するようにしてください。

ブラシに摩耗がないか

絶縁トロリーを使用するうえで、定期的な交換を要するのがブラシです。ブラシは導体よりも弱い材質で作られていて、導体と接触しながら移動していると導体の硬さに負けて少しずつ摩耗していきます。

ブラシが摩耗してくると、集電装置が絶縁トロリーに接触するなどの不具合が発生します。

ブラシの摩耗具合を定期的にチェックし、絶縁トロリーに接触しそうになっていたり著しい摩耗が見受けられる場合は早めに交換するようにしましょう。

尚、ブラシの摩耗は摩耗限界線の残り具合によってある程度判断することができます。

この線が無くなると交換時期となります。

上の写真は摩耗限界線が消えるまで摩耗が進んでしまっていたため交換したブラシです。一番左のブラシはもう摩耗限界線が無くなるまで摩耗しています。

ちなみに、パナソニック製のトロリール用のブラシは摩耗限界線が縦ではなく、水平方向に入っています。

ブラシの摩耗には特に注力して点検するようにしてください。

ブラシの取付部が破損していないか

ブラシの取付部分がプラスチック製のものの場合、まれに取付部分が破損していることがあります。

引用先:デンザイ工業(絶縁トロリー交換部品)

上の写真のブラシはプラスチックの取付部分が折れて無くなってしまっています。この状態でも何とか取り付いていたので不具合は発生しませんでしたが、非常に危ない状態だったと言えます。

特に天井に近い場所に設置されている絶縁トロリーについては、熱によるダメージが蓄積して劣化が早まる可能性もありますので注意が必要です。

ブラシの接続端子に不良がないか

ブラシに接続するための電線についても定期的な点検が必要です。

特に接続用の圧着端子の部分については、ブラシを何度も交換しているうちに根元にダメージが蓄積して断線してしまうことがあります。

実際にそれに気付かずに使い続けてしまったため、この断線部分が発熱して燃えてしまうという不具合を僕自身経験しました。

この圧着端子はビニールテープやキャップで覆われていることもあり、断線に非常に築きにくい部分です。年に1度は是非チェックしてください。

集電装置の配線に断線などの不具合がないか

集電装置は移動装置と一緒に動くため、動作時の振動で配線がフレームの角に擦れたり、集電アームの動きに引っ張られてる余計な力が加わったりすることがあります。

配線がフレームの角で擦れると中の導線がむき出しなり、地絡などの不具合を発生させる可能性があります。配線が地絡するとかなり大きな損傷に繋がるため、異常を見つけたら直ちに処置を行ってください。

また、配線に負荷が掛かっていないかも合わせて点検し、ゆとりが無いようであれば調整するなどの処置を行ってください。

集電装置の可動部はスムーズに動くか

集電装置は絶縁トロリーの多少のたわみなどをスムーズに吸収できるよう、いたるところが可動するようになっています。

ただ長年同じ集電装置を使用していると、可動部が摩耗したり間にゴミやサビが入るなどして、段々動きが悪くなってきます。

定期的に清掃や動きのチェックを行い、動きが悪くなってきているものについては早めに交換するようにしましょう。

まとめ

以上、絶縁トロリーの仕組みや特徴、メンテナンス方法について解説しました。

絶縁トロリーは移動装置の電源供給を担う非常に重要な装置です。また、給電部分や集電部分などには大きな電流が流れるため、メンテナンスには一層気を配る必要があります。

絶縁トロリーは年々進化を遂げており、工場のオートメーション化と共にこれからも広く使われていくことでしょう。今後もより一層、絶縁トロリーによる給電システムのメンテナンスの必要性は高まっていきます。

メンテナンスを担当されている皆さんにとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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