【初心者向け】自己保持回路とは?仕組みや使い方について分かりやすく解説

電気の回路の中でよく登場する「自己保持回路(じこほじかいろ)」。
スイッチを1回押すだけで、機械やモーターを動かし続けられる便利でシンプルな回路ですが、初心者の方にとってはイメージがつかみにくい部分でもあります。
いまいち、回路のイメージがわきません。。。
この記事では、自己保持回路の基本原理から実際の使い方、メリットや注意点までをわかりやすく解説していきます。
電気の勉強を始めた方や、現場の基礎知識を確認されたい方は是非チェックしてみてください。
自己保持回路は基礎的な電気回路のひとつだね
できるだけ分かりやすく・シンプルに解説していきますので、是非覚えてくださいね
自己保持回路ってどんな回路なの?
自己保持回路とは、リレー回路やPLCのプログラムで使われる基本的な回路構成のひとつで、
スイッチを1回入れたら、リレー自身が「自己(じぶん)」でその状態を「保持(キープ)」できるようにした回路のことをいいます。
スイッチの”ON”を保っておく必要がないことや、簡単にその状態を解除することができることから、様々な電気回路によく使われています。
モーターの起動や工場の照明、機械の電源など色々な場面で自己保持回路は使われているよ
自己保持回路の仕組み
自己保持回路の仕組みについて見ていきましょう
スイッチを押してリレーを動作させる
上の図は、スイッチを押すとリレー:RyにAC1ーAC2から電圧が掛かり、リレー:Ryが動作するという簡単な回路です。
そして自己保持回路の”ミソ”が、スイッチと並列にリレー:Ryのa接点が接続されているという点になります。
このリレー:Ryのa接点があることで、「自分で自分の動作を保持(キープ)」できるというわけですね。
詳しく見ていきましょう。
まず、この回路でスイッチを押すとスイッチのa接点が閉じて、リレー:Ryに電圧が掛かります。
すると、リレー:Ryが動作するため、同時にリレー:Ryのa接点も閉じます。
この状態でスイッチから手を離したとしても、リレー:Ryのa接点が閉じたままになるため、リレー:Ryは動作したままの状態が保持されます。
これが自己保持回路の仕組みになります。
仕組みは単純ですが、とても汎用性の高い回路です
動作させたリレーをOFFにしたいときは?
ちなみに、このリレー:Ryの動作を止めたいときは、以下のような回路にすると簡単に実現することができます。
上図では、回路の中にOFFスイッチ(b接点)が新たに入っています。
この状態でONスイッチだけを入れると、
先ほどと同じようにリレー:Ryに電圧が掛かり、リレー:Ryが動作して同時にa接点も閉じます。
これで、ONスイッチから手を離してもリレー:Ryは動作したままになっていますね。
この状態でリレー:Ryの保持を解除したいときは、OFFスイッチを1回だけ押します。
すると、OFFスイッチのb接点を通ってリレー:Ryを動作させていた電気の流れが遮断され、リレー:Ryの動作が解除されます。
これによって、OFFスイッチから手を離してもリレー:Ryのa接点が開いているので、自己保持が完全に解けた状態になります。
スイッチを入れる前の状態に戻りました。
自己保持回路は保持状態を解除するのも簡単だよ!
応用例|自己保持回路の使い方
自己保持回路の仕組みを使うことで、様々な使い方に応用することができます。
モーターの起動
ポンプや送風機など、特に一度起動させたら長時間動き続けるようなモーターに自己保持回路はよく使われます。
上記の図は、電磁接触器とモーターを接続し、操作スイッチで電磁接触器を制御してモーターを回転させるための一例を示しています。
これを実現するための回路は次の通りです。
動力回路
動力回路については、電源ブレーカから電磁接触器MCを接続し、その2次側からモーターへそれぞれ配線を接続します。
こうすることで、電磁接触器MCが開閉すれば、モーターを回転させたり止めたりすることができるようになります。
あとは、この電磁接触器MCをスイッチ操作に連動して開閉するよう、操作回路を自己保持回路で組めば完成です。
操作回路
操作回路を自己保持回路で組むと次のようになります。
今回の自己保持回路は、電磁接触器:MCの補助接点を利用して自己保持回路を組んでいます。
a接点のONスイッチを押すと電磁接触器:MCのコイルが動作し、補助接点によって電磁接触器:MCの動作状態が保持されます。
これにより、モーターに常に電気が供給されるので、自己保持を解除しない限りモーターは回転し続けます。
回転を止めたい場合は、OFFスイッチを押すことで自己保持が解けるので、モーターへ電気が供給されなくなり回転が止まります。
このように、簡単な回路でモーターのON・OFFを制御することができます。
電磁接触器の補助接点を使えば、リレーを使わなくても自己保持回路が実現できます
設備の非常停止
自己保持回路に非常停止スイッチを組み込むことで、設備の非常停止回路を構成することもできます。
非常停止スイッチは、通常押すと接点が開くb接点を用いることが一般的で、自己保持回路で組んだ設備の電源回路に入れて使用します。
この回路の場合も、基本的な考え方はモーター起動用の自己保持回路と同様です。
モーター起動用自己保持回路の「OFFスイッチ」の仕組みと同じで、非常停止スイッチのb接点を電源投入用の操作回路の中に組み込むことで、非常時には確実に自己保持が解除されて設備の電源を切ることができます。
設備の電源入り切りの回路は、非常停止スイッチと自己保持回路がセットになっている場合が多いよね
自己保持が一度解けると勝手に電源が入ることがありませんので、意図せずに電源が入ったり、設備が動いたりすることを防いでくれます
まとめ
以上、自己保持回路について仕組みやその使い方について解説しました。
自己保持回路は、一度スイッチを押せば手を離してもモーターが動作し続けたり、電源を投入することができる回路の仕組みであり、工場設備や各種制御盤にとって欠かせない基本回路です。
さらに、非常停止スイッチを組み込むことで、緊急時には自己保持が解除され、確実に機械を停止させる安全機能としても活用できます。
初心者の方にとっては少し難しく感じるかもしれませんが、今回ご紹介したモーターの起動回路さえ理解すれば、自己保持回路の考え方は概ね掴めていると思います。
ぜひ基本をしっかり押さえて、電気回路の理解や現場作業に役立ててください。