【デジタル式との違い】アナログテスターのメリットと使い方・活用方法について解説

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皆さんは仕事でアナログテスターを使っていますでしょうか?

テスターで電圧や抵抗値を測定する際、多くの場合は数字がデジタル表示されるデジタルテスターがよく使われます。

かく言う僕も、電圧などの数値を測定して記録を残すような仕事の時は、必ずデジタルテスターの方を使用します。

かたや、アナログテスターはというと目盛と針で測定値を表現するため、デジタル表示のテスターと比べると少し使いにくい場合があります。

目盛と針と睨めっこしながら測定値を読み取ろうとすると。。。やっぱりデジタル表示の方がいいやってなっちゃいますよね。

ここまでだと、アナログテスターはデジタルテスターと比べてデメリットばかりのように思えますが、実はデジタルにはないメリットがあったりします。

この記事では、アナログテスターにはどんなメリットがあるのか、そのように使えばそのメリットを享受できるかについて解説していきます。

なべ
なべ

アナログテスターは使いどころによってはデジタルテスターよりも便利なことがあります。

電気の仕事をされている方はデジタル式とアナログ式どちらも持っておくと重宝しますよ。

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アナログテスターのデメリット

まずはアナログ式のデメリットについておさらいしておきましょう。

数値の読み取りが疲れる

アナログテスターは数値を読みたびに目盛と針に目を凝らす必要があるため、測定箇所が多いと疲れます。

デジタルテスターの場合は測定値が数字でそのまま表示されるので、数値の読み取りがとても楽に行えます。

読み取り精度にバラツキが出る

アナログテスターは針と目盛を真上から見ないと、正しい測定値を読み取ることができません。

写真のように、実際の針と目盛の下にある鏡に映る針とが完全に重なる角度が、測定者から見た「真上」になります。この「真上」の状態で読み取らないと、見る角度によって示す数値が微妙に変わってしまいます。

また目分量の部分についても、測定者の感覚によって若干の違いが生まれる場合があります。

デジタルテスターの場合は測定値がそのまま数字で表示されるので、測定者の違いによる読み取り誤差が生じることはありません。

高精度に数値を測定して記録する用途においては、やはりデジタルテスターに軍配が上がります。

適正レンジに合わせる必要がある

アナログテスターで電流や電圧を測定する時、測定値に応じてレンジを適正に調整する必要があります。

アナログテスターの針の可動範囲には制限があり、この可動範囲内に測定値が収まるようレンジを選択しなければなりません。

測定値に対して大きなレンジに合わせてしまうと針が少ししか振れませんし、逆に小さすぎると針が振り切ってしまいます。なので、正確な測定値を表示させるには、丁度良いあんばいのレンジ選択が必要です。

デジタル式の場合は、このレンジ設定を自動でテスターがやってくれる(そうでない機種もありますが)ので、細かいレンジ選択をユーザー側でする必要はありません。

ゼロΩ調整が必要

アナログテスターで抵抗値を測定する時は測定前にゼロΩ調整が必要になります。

テスターを抵抗レンジに切り替えてテストピン同士を接触させた時、針が0Ωになるよう調整ダイヤルで調整します。この調整を行わないと正しい抵抗値を測定することができません。

デジタルテスターにはこのような事前調整が必要ないので、この一手間もアナログテスターのデメリットの1つですね。

アナログテスターのメリット

ここまではアナログ式のデメリットについてお伝えしてきました。続いては、デジタル式に対してどのようなメリットがあるのかについてです。

測定値の時間的変化が見やすい

アナログテスターの最大のメリットが「測定値の時間的変化が見やすい」という点です。

デジタル式の場合は測定した数値がパラパラと変わっても、あまり時間的な変化が感じ取れません。

アナログ式の場合は測定値の変化に追随して針が動くので、時間的な変化が目で見て分かりやすいという特徴があります。

丁度、オシロスコープの波形で測定値の変化をグラフで観測している感覚ですね。

この時間的な変化を視認しやすいという点が、アナログ式の大きなアドバンテージです。

反応が早い

測定値が直ぐ針で表示される反応の良さもアナログ式のメリットの1つです。

デジタルテスターの場合は、テストピンを測定対象に当ててから数値が表示されるのにワンテンポ時間が掛かります。

アナログテスターの場合は、テストピンを当てた瞬間に針が振れて測定値を示すので、大体の数値が測定できれば良いというような時には重宝します。

電池が無くても電流・電圧を測定できる

デジタルテスターは電池が無くなると全く使い物になりませんが、アナログテスターは理科の実験で使うような直流電流計の回路構造を利用しています。

なので、電流や電圧を測定する場合は電源を必要としないため、中に電池が入っていなくても測定することができます。

単純に電圧だけを測定する用途でしか使わないのであれば、電池切れを気にすること無く使い続けることが可能です。

ただし、抵抗を測定する場合はテスターから微量の電流を流して測定するため、電池が必要になります。

アナログテスターの使い方

アナログテスターはデジタルテスターにはない使用上の重要ポイントがあります、しっかりおさえておきましょう。

針が「0」を指すように調整する

まずはアナログテスターの針が「0」を指すように調整を行います。テスターの針は0を起点にして測定値を示すので、最初にここを調整しておかないと正しい値を測定することができません。

何も測定していない状態だとテスターの針は「0」を指しているはずですが、まれにこのような状態になっていることがあります。

針が少しだけ振れてしまっています。この状態で測定してしまうと、針が振れている分が本来の測定値に加算されてしまうので、それを防ぐために針が「0」を指すように調整します。調整は針の根元付近にあるダイヤルを回して行います。

回し過ぎると壊れる可能性があるので、針の動きを見ながらゆっくりと回して調整しましょう。

針が「0」を指す位置に調整ができました。この状態になってから測定を開始します。

電圧・電流の測定時は高いレンジから設定する

アナログテスターで電流や電圧を測定する場合、適正なレンジに設定する必要があります。

ただ、一言で「適正なレンジ」と言っても測定対象の電圧であったり電流がどれぐらいなのか分からない場合は、一発で適正なレンジに合わせるのは難しいです。

なので、測定値の大きさが分からない場合は一番大きなレンジに合わせて測定するのが基本になります。

例として、家庭用コンセントの電圧を測定する場合を考えてみましょう。家庭用コンセントはAC100Vだと分かっていますが、今回は電圧の大きさが分からないものとして測定を開始します。

電圧が交流であることは分かっていますが、大きさが分からないので一番大きなレンジにまずは設定して測定をします。

このアナログテスターの場合は【500】のレンジになります。

レンジを設定したら測定を開始します。

レンジが【500】なので、「250」の列の数値を2倍するか「50」の列の数値を10倍するか「10」の列の数値を50倍するかで、測定値を読み取ります。この時点で大まかに「AC100Vぐらいかな」ということが分かりますが、細かいところまではちょっと分かりにくいですね。

もう少し精度を上げるためにもう一段階レンジを落として【250】にしてみます。

さっきよりも針が大きく振れましたね。

レンジが【250】だと「250」の列の数値をそのまま読めば良いので、レンジが【500】の時よりも細かい数値を読み取ることができます。目分量で大体AC107V〜108Vぐらいでしょうか。

このようにして、自分の一番読み取りやすい位置に針が振れるようレンジを調整しながら測定を行っていきます。

ちなみにもう一段階レンジを落として【50】にしてしまうと

このような感じで針が振り切れてしまいます。この状態を何度も続けてしまうと故障の原因になりますので、測定値が分からない場合は必ず一番高いレンジから順に追い込んでいくようにしてください。

抵抗値を測定するときはゼロΩ調整を行う

アナログテスターで抵抗値を測定する前に必ずやらなければならないのが「ゼロΩ調整」です。

アナログテスターでは抵抗値の最小つまり0Ωを表示するときは、針がMAXに振り切った状態です。なので、針がMAXで振り切った時にきっちり0Ωじゃないと正しい抵抗値が表示されません。ゼロΩ調整をしっかりと行ってから測定を始めていきましょう。

まずはレンジを抵抗に合わせます。

その状態で赤と黒のテストピン同士を合わせます。

テストピン同士が直接触れているわけですから、この状態だと抵抗値は必ず0Ωになります。なので、もしこの状態で針が0Ωを指していなかったら調整を行います。

針が0Ωを指していませんね。この場合はテストピンを合わせたままゼロΩ調整ダイヤルを回して針が0Ωを指すように調整します。

このアナログテスターの場合はこのような調整ダイヤルが付いています。ゼロΩ調整用のダイヤルは頻繁に操作するため、どのメーカーも操作しやすいよう作られているのが一般的です。

針が0Ωを指す位置に調整することができました。この状態になってから抵抗値を測定していきましょう。抵抗値を測定する場合も、まずは大きなレンジから設定するというのが原則です。

アナログテスターの活用方法

アナログテスターのメリットは「測定値の時間的変化が見やすい」ことと「反応が早い」ということでした。これらのメリットを利用すると次の場合に便利に使うことができます。

配線の断線・接触不良チェック

アナログテスターは配線の断線や接触不良を調べるのにとても役に立ちます。

例えば配線が断線しかかっているなどで接触不良を起こしている場合、原因調査はテスターの抵抗レンジを使って配線の抵抗値を見ながら、配線を揺らして変化がないかを見て不具合の有無を判断します。

デジタル式の場合は数値が表示されるのにタイムラグがあるため、配線を揺すったときに一瞬接触不良になったとしても、その変化に対応できないことがあります。

アナログ式の場合は一瞬の接触不良による抵抗値の変化にも素早く針が反応するので、「この配線が接触不良を起こしているな」ということが一目で分かります。

配線の不具合をチェックする場合はアナログテスターの方が断然有利です。

電圧の変化をチェックする

電圧の変化をチェックしたい場合も、デジタルテスターよりもアナログテスターの方が有利です。

例えば、装置が動き出す瞬間に電源電圧がどれだけ降下するかなど、アナログメーターが付いていない設備での電圧変動の確認は、アナログテスターを使って行うほうが分かりやすいです。

アナログテスターは測定記録用途よりも、調査・確認・チェックの用途に威力を発揮します。

おおよその数値を測定する

電気の仕事をしていると、「だいたいどれぐらいの数値かを知りたい」という場面にちょくちょく遭遇します。

どれぐらい電圧が掛かっているかを調べたいといった検電器的な使い方であったり、この回路のおおよその抵抗値を知りたいといった場合などですね。

この場合は、デジタル式で測定するよりもアナログ式の方がテストピンを当てたときに直ぐ反応しますし、感覚的にも測定値が分かりやすいのでアナログ式の方が使いやすいです。

アナログ式は調査・確認にとても便利

以上、アナログテスターのメリットや使い方についてお伝えしました。

アナログテスターは数値を測定するという用途よりも、おおよその数値をチェックしたり変化を確認したりする用途に適している測定器具です。

なので、断線や接触不良などの電気的なトラブル対応時にとても役に立ちます。

是非、デジタルテスターだけでなくアナログテスターも上手に活用してみてください。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
6年前から営業職兼務になり、営業から設計・製作・工事・回収までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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