【光伝送装置って何?】特徴とその種類について分かりやすく解説
工場内の装置同士が連携して動くためには、お互いが様々な情報(データ)を交換しあう(通信する)必要があります。
装置間でデータのやり取りを行う方法はいくつかありますが、動く装置と直接通信する場合などは、ケーブルで直接接続せずに無線で行われることが多いです。
装置間の通信には様々な方法がありますが、最もよく使われる方法の一つが「光伝送装置(空間光データ伝送装置)」と呼ばれる通信機器を使う方法です。
この記事では、光伝送装置とは一体どのようなものなのか?特徴や種類をお伝えしつつ解説していきます。
クレーンをリモートで運転する場合など、光伝送装置は実に様々なシーンで使われています。
光伝送装置とは
光伝送装置は空間光データ伝送装置とも呼ばれ、その名の通り光を使って装置間の空間をデータ伝送できる装置です。
通常、装置間のデータのやり取りはケーブルをお互いの制御装置に接続して行います。
ただ、データのやり取りを行う相手が搬送台車など動く装置である場合、お互いをケーブルで接続することが困難です。
引用先:村田機械株式会社(搬送台車システム RTN-X)
また、装置と装置の間に道路があるなど、ケーブルの敷設が時間的・コスト的に現実的でない場合もあります。
写真の様に、道路を挟んで隣のビルにある装置と通信する場合などですね。
そこで役に立つのが光伝送装置です。
光伝送装置を使うことで、従来ケーブルだった部分を置き換えることができます。これにより、相手が動く装置であったりケーブルの接続が難しい場合でも無線でデータ伝送が可能になるわけです。
引用:北陽電機株式会社(光伝送の仕組みと活用)
図のようにケーブルの部分を光に置き換えることができる訳ですね。光伝送装置を使うことでケーブルを直接接続したのと同じ状態になります。
光は赤外線を使用していて、身近なところではテレビやエアコンなどのリモコン、防犯カメラなどにも使用されていたりします。
原理はテレビのリモコンなどと同じなんですね。
光伝送装置の特徴
光伝送装置には次のような特徴があります。
ノイズの影響を受けない
光伝送装置は赤外線を使って通信を行っているため、通信伝路間はノイズの影響を受けません。なので、安定的にデータの通信が可能です。
ただし、光伝送装置本体へはケーブル接続となるので、このケーブルについてはノイズ対策が必要になります。
ホコリなどの汚れには比較的強い
光伝送装置は光電センサと同じようにレンズから光を出しますが、意外とレンズにホコリが付着していても問題なく通信ができます。
流石に装置の前に鉄板のような遮光物があると通信が出来なくなりますが、多少のホコリ程度であればそこまで神経質にならなくても大丈夫です。それぐらい光の強さがあります。
直線でしか通信ができない
これは弱点とも言えるのですが、光伝送装置は光を真っ直ぐにしか飛ばせないため、直線上にある装置としか通信が出来ません。
なので光伝送装置で動く装置と通信する場合は、相手が光の直線上にある状態もしくはレールなどで走行軌道を制限して行う必要があります。
ループ台車や無人搬送車のように、途中で曲がったりして光の直線上から外れると通信ができなくなります。
光伝送装置の種類
光伝送装置には大きく分けて「シリアルタイプ」と「パラレルタイプ」があります。
シリアル通信とパラレルの通信の違いについては次の記事で詳しく説明しています。
シリアルタイプとパラレルタイプでは通信の特徴から使用用途が少し異なります。
シリアルタイプ
引用先:北陽電機㈱【光データ伝送装置 BWF-11/21/31/41】
引用先:東洋電機㈱【シリアルタイプ空間光伝送装置 SOT-GS50/80/150シリーズ】
シリアルタイプはシリアル通信で多数のデータ伝送を行うために使用する光伝送装置です。
シリアル通信を行える機器同士をケーブルで直接繋ぐ代わりに、このシリアルタイプの光伝送装置に接続することでデータ伝送が可能になります。
シリアルタイプは装置前面に大きなレンズがあるのが特徴で、伝送距離が50m〜100、機種によっては200mぐらいまでの長距離通信が可能となっています。
なので、レールの上を直線で動くクレーンや搬送台車に動作指令を送ってリモート運転するといった使い方に最も適しています。
他にも、増設した設備とシリアル通信したいがケーブル敷設が大変といった場合などにも活用できます。
メーカーでは「北陽電機」や「東洋電機」が有名ですね。
パラレルタイプ
引用先:北陽電機㈱(DMS-G/H-V)
引用先:東洋電機㈱(SOT-FP801/803/805シリーズ)
パラレルタイプは4〜8点の入出力信号をやり取りできる光伝送装置です。
機種によっては16点まで通信が出来るものもあります。
パラレルタイプの場合は、数点の入出力信号のON・OFFだけの通信なので、ややこしい機器を使用しなくても制御が簡単に行えるのが特徴です。
例えば、搬送台車に対して「動いて良いよ」とか「今動いちゃだめ」といった信号を
飛ばしたり、逆に搬送台車から「到着したよ」とか「今から動くよ」といった信号を受け取ったりする場合などで使用できます。
このように単純な数点の信号のやり取りだけの場合は、このパラレルタイプは非常に重宝する光伝送装置です。
装置本体はシリアルタイプと比べて小型な場合がほとんどなので、取り付けがしやすいのも特徴のひとつです。
ただし、シリアルタイプよりも通信できる伝送距離が短い(数メートル程度)ので、離れた距離にある装置とは直接通信することが難しいというデメリットもあります。
パラレルタイプもやはり「北陽電機」と「東洋電機が」有名ですね。
特殊な光伝送装置
他にも変わった光伝送装置が存在します。
シリアル/パラレル同時通信タイプ
引用先:東洋電機㈱(空間光伝送装置 SOT-NP32708KL)
東洋電機から発売されている光伝送装置の「SOT-NP32708KL」です。
通常の光伝送装置はシリアルタイプもしくはパラレルタイプとはっきり分かれるのですが、この機種はシリアル通信とパラレル通信を同時に行うことができます。
引用先:東洋電機㈱(空間光伝送装置 SOT-NP32708KL)
パラレル通信できる入出力信号数は32点とかなり多く、伝送距離も最大70mとそこそこの長距離通信が可能です。
まさに、シリアルタイプとパラレルタイプの良いとこ取りをしたような製品ですね。
空間光映像伝送装置
引用先:東洋電機㈱(空間光映像伝送装置 SOT-AV 一般標準タイプ)
これも東洋電機から発売されている機種で「SOT-AV」という映像データを光で伝送できる装置です。
主な用途としては、駐車場やエレベータなどの防犯カメラで撮影した映像データを伝送するために用いられます。
伝送装置の受信側にはBNCコネクタが付いているので、間に制御装置がなくても直接映像をモニタに映すことが可能です。
引用先:東洋電機㈱(空間光映像伝送装置 SOT-AV 一般標準タイプ)
伝送距離は50m〜130mぐらい、機種によっては250mまで飛ばせるものもラインナップされています。
まとめ
以上、光伝送装置の特徴とその種類について解説しました。
光伝送装置はタイプや用途によって種類が様々です。特徴を最大限に生かすためにもシーンに応じた機種を選定してください。
項 目 | シリアル タイプ | パラレル タイプ |
通信方式 | シリアル通信 | パラレル通信 |
伝送距離 | 長い (50〜200m) | 短い (数メートル) |
伝送速度 | 遅い | 速い |
伝送できる データ容量 | 多い | 少ない |
本体サイズ | 大きい | 小さい |