【仕事で困ったときの考え方】顧客からの厳しい納期短縮の要求についての対応
普段の仕事の中では顧客(クライアント)から無理難題を要求されることが多いかと思います。
最近一番言われるのが納期の厳守。
余裕のある納期の要求であれば特に考え込むことはないですが、こちらから提示した納期に対して顧客が要求してくる納期は、ギリギリもしくはそれを無視した厳しいものが非常に多い印象です。
皆さんはこのような状況に苦しまれたことはないでしょうか?僕は現在進行形でかなり苦しんでいます。
特に昨今の半導体不足や樹脂不足の影響によって電気機器の納期が大幅に遅延しており、今まで数日〜数週間ぐらいで入荷されていたものが半年〜1年、ものによっては数年掛かる場合もあります。
このような状況の中、顧客からの無理な納期要求に対してどう応えていけばいいのか?、僕が仕事の中で取り組んでいることや考え方などを共有させていただければと思います。
1.電気機器の納期遅延について
昨今一番納期遅れに響いているのがこの電気部品の納期遅延です。原因は前述したとおり半導体不足と樹脂不足の影響が非常に大きいです。
1−1.半導体不足の原因
様々な記事によると、元々アメリカと中国との間で貿易摩擦が生じており、中国からアメリカへの半導体の輸出量が大幅に減少していたという背景があった。そこに新型コロナウイルスが蔓延したことで巣ごもり需要・テレワーク需要によるテレビ・パソコン等のニーズが増え、半導体の需要が一気に高まったことで半導体不足が加速していったとのことです。
さらに中国上海のロックダウンをはじめ、世界中の工場が新型コロナにより生産停止に追い込まれたことも半導体生産停滞の一因となっているようです。
自動車のマイコンを生産している日本のルネサスエレクトロニクス那珂工場が2021年3月に火災で設備停止しましたが、これも影響していると思います。
様々な背景・要因がタイミング悪く重なってしまったことで半導体不足という昨今の状況が形成されてしまったんですね。
1−2.樹脂不足の原因
樹脂不足については2021年2月に起きたテキサス州の記録的な大寒波が影響しているとのことです。アメリカテキサス州には数多くの化学プラントが集中しているのですが、大寒波の影響で配管が凍結し破裂してしてしまいました。元々テキサス州は温暖な土地なので、寒波を想定した設計にはなっていなかったそうです。
さらに寒波により電力需要が急増、それに供給が追いつかない状態になってしまったため大規模な停電まで発生しました。
これらの影響によりテキサス州の化学プラント工場が軒並み停止に追い込まれてしまったことで、樹脂の供給が停滞し世界的な樹脂不足に発展しているとのことです。
破損した配管の復旧が厄介とのことで、現在も2021年2月以前の通常稼働には戻っていません。
1−3.電気機器への影響
電気機器は中に半導体・外装にプラスチックを使用していることが多いので、これらの供給不足は電気機器の納期遅延にモロに影響を与えています。僕は仕事がら産業用FA機器を取り扱うことが多いので、これらの事象が仕事に悪影響を及ぼしています。
主な電気機器の納期遅延状況について、僕の感覚や商社・業者さんから言われている情報は下記の通りです。
機 器 名 | コロナ禍以前 | 現状(2022年11月現在) |
インバータ<某M社製> | 在庫があれば2〜3日、無くても1ヶ月程度 | 12〜15ヶ月以上 |
PLC(プログラマブルロジックコントローラー)<某M社・Y社> | 在庫があれば2〜3日、無くても1ヶ月程度 | 12ヶ月以上、特殊ユニットだと36ヶ月 |
スイッチングレギュレータ | 在庫があれば〜1週間、無くても1ヶ月程度 | 12ヶ月以上 |
電磁接触器 | 在庫があれば2〜3日、無くても1ヶ月程度 | 3〜6ヶ月以上 |
光電センサー | 在庫があれば2〜3日、無くても1ヶ月程度 | 3〜6ヶ月以上 |
パラレルタイプ光伝送装置(某H社製) | 在庫があれば〜1週間、無くても1ヶ月程度 | 24ヶ月以上 |
産業用モーター | 在庫があれば〜1週間、無くても1〜3ヶ月程度 | 6ヶ月〜12ヶ月以上 |
産業用ブレーキ | 1〜3ヶ月程度 | 10ヶ月以上 |
半導体不足とは直接関係は有りませんが、間接的な影響で産業用モーターやブレーキ等についても納期が大幅に遅延している状況です。
商社や物流センターを持っているようなメーカーに問い合わせても、在庫が枯渇していたり納入先がすでに決まっていたりと、容易に手に入れることが出来ないのが実情です。
1−4.サプライヤーからの回答
見積もり段階で問い合わせてもハッキリとした回答をもらえることが少ないです。「〜見込み」とか「〜以上」とか、納期の確約をもらうことが非常に困難です。納期の見通しが立つのが発注してから暫く経ってからで、それでも「〇〇月の〇〇日に納品」みたいな回答は直前にならないと中々もらうことが出来ません。
たまに半年〜1年以上と言われていた納期の機器が2ヶ月ほどで入荷してくる場合もあります。恐らく急遽キャンセルが出てこちらに回ってきたものと思われますが、これについても予想が全く事前に出来ないので、計算に入れることが困難です。
センサー作っている有名メーカーさんに直接聞いたのですが、とある電気機器の受注残が現在大量に有って、月の生産数を考えると現在受注分の製品を全て納入し終わるのに約2年を要しているそうです。現在の半導体不足を解消する為の増産体制を整えるべくその電気機器が大量に発注されているようで、それが影響して納期遅延に拍車が掛かっているとのことでした。僕もその電気機器がボトルネックになっている案件があるので、かなり頭を悩ませています。
このように、サプライヤーにとっても取引先に対して満足な回答を出すことができないジレンマに陥っている状況です。この辺は不可抗力であり、気合いと根性でどうにかなる問題では有りませんので仕方が無いですね。
2.納期短縮の取り組み
電気機器の納期遅延が長納期化の原因になっているケースが多いですが、顧客からはそれでも納期短縮を要求される場合があります。昨今の状況を顧客自身理解していたとしても、稟議申請の関係や工場の生産計画等の事情が有ってやむを得ず納期の短縮を要求せざるをえないという側面もあります。
顧客と自分たち、引き合いを受けた案件に対してお互いがWin−Winで終わるよう自分たちも出来る限りの努力が必要だと思います。
僕自身まさに現在その課題に直面しており日々頭を悩ませているのですが、今の状況の中でいかに行動すれば納期短縮の可能性が高まるのか、僕が実際に今行っている内容をお伝えします。
2−1.とにかく探し続ける
何かの部品や機器の納期遅延がボトルネックとなっている場合、とにかくその部品や機器が手に入る代理店を探しまくります。Google等の検索窓に「〇〇〇(メーカー名) 代理店」と入力すると日本全国の代理店一覧を調べることができます。その中で自社と取引のある代理店にメールを片っ端から送って回答をもらうという方法です。
自社倉庫や物流センターを持っているサプライヤーに声を掛けていくと在庫を持っているケースがあるので、そのようなサプライヤーを優先していくといいかと思います。
2−2.代替品を探す
使おうとしている部品や機器の代替品を選定するという方法になります。センサーやモーター等の機器については様々なメーカーが販売していますが、外形や性能は似通っている場合が多く、そのまま置き換えられるケースが少なく有りません。取り合いが多少違っていたとしても、少しの工夫で使うことが出来たりします。
僕が仕事の中で経験したケースで、とあるメーカーの電気機器の納期が約2年と言われていましたが、別のメーカーで同仕様のものを確認したところ納期が1ヶ月〜6ヶ月と言われたことがありました。どうやら1つのメーカーに対して注文が殺到していたようで、メーカーを変えるだけで同仕様の機器が短納期で手に入ったのです。どちらのメーカーも有名なメーカーです。
事前の検討や確認が必要な場合が有りますが、メーカーを変えるだけで劇的に納期短縮が出来る場合が有るので、手段の1つとして考えて頂ければと思います。
ただし、メーカーを変える場合は顧客に理解を求める必要があるかと思いますので、事前に事情と理由を説明し納得してもらうようにして下さい。
2−3.中古品を使う
若干邪道な方法かもしれませんが、新品ではなく中古を使用するという手立てもあります。例えばどうしても納期が掛かって手に入らないという部品について、その部分だけ中古を使用して取りあえず稼働を優先させ、後日新品が入荷次第交換して有るべき姿にするというやり方です。
手持ちに中古がある場合や、既設設備の部品を取り外して新規設備に移植しても稼働に差し支えない場合には可能な方法かと思います。
ただし、中古である以上故障のリスクを伴いますし、既設設備から取り外す際に破損させてしまう可能性も有ります。
この手段についても顧客に対して事情や内在リスクの説明を事前に十分行い、理解してもらうことが不可欠になります。
2−4.とにかく早く発注をしてもらう
見積もり段階ではサプライヤーからの回答は「〇〇見込み」や「〇〇以上」といった曖昧な回答が殆どです。顧客に対して〇〇年〇〇月までの納入という確約は出来ませんし、するべきでは有りません。
現状ではサプライヤーに発注をしないことには明確な納期が見えてこない以上、顧客には取りあえず発注をしてもらい、その後に納期を追っかけていくという流れを取らないと前に進めることが出来ません。
サプライヤーの方でも段々と増産体制が整ってきているとのことで、時間が経てば今の状況よりは納期遅延が改善される見込みです。数ヶ月の間にこの状況が改善されることは難しいですが、1〜2年スパンで考えると納期短縮のチャンスが必ずあると思います。
納期短縮の議論で時間を無駄に費やしてしまうとスタートがどんどん遅れて、ギリギリだった納期が結局間に合わなくなってしまったという事態に為りかねませんので、まずは発注をしてもらうことを優先するよう顧客の方へ働きかけていって下さい。
3.それでも納期短縮が困難な場合は
どんな打ち手を考え行動したとしても、やはりどうしても納期短縮が望めないケースが有ります。
一個人が会社の中でどれだけ労力を使って頑張っても、サプライヤーから部品が入荷出来ないことにはどうしようもありません。企業努力だけではどうしようもない不可抗力に対しては抗うことが出来ないからです。
顧客に対してはこのような状況について嘘偽り無く実情をさらけ出し、説明して理解してもらうしか有りません。
- 長納期のボトルネックになる部品及び機器は何なのか?
- その部品及び機器はなぜ手に入らないのか?
- 納期短縮に向けて自社ではどのような行動を取っているか?
- 企業努力ではどうにもならない(不可抗力の部分が大きい)
これらのことをしっかり顧客に文章で伝えるようにして下さい。
また、納期についてはあくまで努力目標とし、納期短縮に向けて精一杯努力はするが確約は出来ない旨についても必ず伝えて下さい。
相手にボールを預けて判断してもらうことが大切です。
4.まとめ
以上、顧客からの無理な納期短縮要求への対応について、僕なりの考え方や行動についてお話いたしました。
特に設備が古くなってくると、いかに昨今のような状況であっても顧客としては「早く更新してリスクを取り除きたい」・「故障で生産が止まると大問題だ」というプレッシャーから、納期短縮を迫ってきます。それは顧客としては当然の思いですし、もし自分がその立場だとしたら同じような行動を取ると思います。
ただ、私たちが「どれだけ努力しても」・「どれだけ時間を掛けて行動したとしても」、サプライヤーから部品や電気機器が入ってこないことには結局「待ち」の状態になってしまいます。
自らの首を絞めないためにもメールや仕様書等の文章でこちらのリスクは抑えつつも、納期短縮に向けて精一杯の努力と誠意で対応することを心掛けて下さい。
お互いが納得して同じ方向に向くことができれば、きっと良い結果が生まれると信じています。