【ノイズ対策の基本!】ノイズフィルターの役割とその種類について分かりやすく解説

電気回路や電子機器を扱っている方にとって、「ノイズ」によるトラブルに悩まされることも少なくありません。
インバータで駆動されているモーターや外部からの電磁波など、ノイズは様々なところが発生源となり、機器の誤作動や通信不良、さらには機器の故障につながることもあります。
発生するノイズを抑える方法がないのかな〜?
そんな時に活躍するのが「ノイズフィルター」と呼ばれる電気部品です。
本記事では、ノイズフィルター役割や種類についてわかりやすく解説します。
電気工事や保守の現場だけでなく、オーディオやパソコン周辺機器にも役立つ知識なので、ぜひ参考にしてください。
“ノイズ”って聞くだけで、何か電気に影響を及ぼしそうな気がするね
ノイズは目に見えないので、対策するのも一苦労です
そもそもノイズって何?
“ノイズ”って、うるさい騒音のことですか?
“ノイズ”と聞くと、このように「身の回りで聞こえるうるさい音(騒音)」をイメージされる方がおられるかもしれませんが、電気で言う”ノイズ”とは少しニュアンスが異なります。
電気の分野で言うノイズは「信号に混ざり込んで邪魔をする余計な電気の成分」のことを指します。
つまり、せっかく伝えたい大事な電気の動きが、この「電気の雑音」によって、かき乱されてしまうということなんです。
音声や通信が乱れるのも、このノイズによって邪魔されるのが原因なんだね
ノイズの発生源について
ノイズの主な発生源は次ようなものがあります。
インバータ
工場内の設備や産業機器などで代表的なノイズの発生源となっているのがインバータです。
インバータはモーターを動かす為に超高速で”スイッチング”を行っているため、余計な電気の波が発生し、それがノイズとなって外に漏れ出してしまうんです。
インバータには必ずノイズ対策が施されていますね
スイッチング電源装置
スイッチング電源装置とは、交流電源(AC)から直流電源(DC)を作るための装置で、直流安定化電源やパワーサプライとも呼ばれています。
名前に”スイッチング”という言葉が入っているように、スイッチング電源装置も半導体による高速スイッチング技術を使っているため、インバータ同様ノイズが発生しやすい特性を持っています。
スイッチング電源装置は、制御盤の中には必ずと言っていいほど使われている機器だね
溶接機
鉄工所等で使われる溶接機もノイズの発生源として知られています。
溶接機は一気に大きな電流を流したり、アークによる電気の乱れを起こしたりと、何かと電気に対して影響を与える機器です。
この大電流の乱れがノイズとなって外に漏れ出し、周囲にある電気機器や同じ電源に接続されている設備に悪影響を与えてしまうのです。
溶接ロボットも同じようにノイズの発生源となることがあります
自動車工場では必ず使われているロボットだね
ノイズの種類
ノイズには主に次のような種類があります。
伝導ノイズ
伝導ノイズとは、電線やケーブルを通じて伝わるノイズのことを言います。
電源線や制御線にノイズが入り込んでしまうと、その線に接続されている他の機器へもノイズが伝わってしまいます。
その結果、機器の誤動作や通信障害など、電気に対して悪影響を与える原因になります。
同じ電源ラインにノイズの発生源があると、精密機器にまで影響を及ぼしてしまいます
放射ノイズ
放射ノイズとは、空気中を飛んで別の機器に影響を及ぼすノイズのことを言います。
ノイズの発生源とは直接つながっていなくても、ケーブルや装置そのものが”アンテナ”のような働きをして、周囲にノイズをまき散らしてしまうことがあります。
この放射ノイズも伝導ノイズと同じく、周囲にある機器に誤動作などの引き起こす原因となってしまうため、ノイズ対策が不可欠です。
離れていても、飛んでくるノイズで誤動作することがあるんだ
ノイズフィルターの役割について
前項でお伝えしたとおり、ノイズは接続されている精密機器や周囲にある電子機器に至るまで、様々な悪影響を及ぼす原因となります。
このような邪魔なノイズを取り除いてくれる役割を持つのが、「ノイズフィルター」と呼ばれる製品です。
電気の”汚れ”を綺麗にしてくれるというイメージですね
ノイズフィルターは主に次のような役割を担っています。
侵入してくるノイズをカットする
必要な電気や信号は通しつつ、誤動作の原因となるノイズ成分だけを取り除きます。
供給される電気がとてもクリーンな状態になるため、センサーや制御機器などの動作がとても安定するようになります。
飛び出すノイズを吸収してくれる
ノイズフィルターは、電気と一緒に流れてくるノイズを除去する以外にも、空気中に飛んでいこうとする放射ノイズを吸収してくれる働きを持つものも存在します。
伝導ノイズと放射ノイズ両方を対策することで、より安定的に機器を使用することができます。
発生したノイズの流出を防ぐ
ノイズフィルターはノイズの侵入を防ぐだけでなく、機器自ら発生させたノイズを外に出さないようにしてくれる役割も持っています。
ノイズの発生源にもノイズフィルターを設置することで、より周囲に与えるノイズの影響を最小限にすることが可能となります。
特に工場設備や産業機械はインバータや溶接機などのノイズの発生源が非常に多いから、ノイズフィルタは欠かせないよ!
ノイズフィルターってどんな種類があるの?
ノイズフィルターには様々な種類のものがラインナップされています。
工場設備等でよく使われるノイズフィルターについて見ていきましょう。
フェライトコア
フェライトコアとは、鉄を主成分とした粉に他の金属を混ぜて焼き固めたセラミックで作られた部品で、筒状の形をしているのが特徴です。
私達の身の回りでよく見かけるフェライトコアが、パソコンや家電製品の電源ケーブルに付いている丸い筒状の部分などがそうですね。
この赤い丸で囲った部分がフェライトコアです。
この部分を開くと、黒い磁石のようなものが入っていて、
引用先:ELECOM(フェライトコア NF-72S)
ここにノイズが流れている電線を通します。
引用先:星和電機株式会社(フェライトコア 技術資料)
何回も通すことで、より高い効果を発揮します
このように、電気をフェライトコアに通すことでノイズを吸収し、熱に変換して排出してくれるという仕組みです。
同じ仕組みを利用した製品で、各インバータメーカーからオプションとしてノイズフィルターがラインナップされています。
写真は、三菱電機製のインバータとモーターに繋がっている電線をノイズフィルターに巻き付けている様子です。
このようなオプションを使用することで、インバータで発生するノイズを低減することができます。
フェライトコアは、放射ノイズの吸収にも効果があるよ
電源ライン用ノイズフィルター
電源ライン用ノイズフィルターとは、様々な電気機器の電源に接続する一般的なノイズフィルターです。
このノイズフィルターには、大きく分けて「コイル(インダクタ)」と「コンデンサ(キャパシタ)」が入っていて、この2つの部品を組み合わせることでノイズを除去しています。
コイルの働き
コイルは、低い周波数の電気はスルッと通すことができますが、高い周波数の電気は通りにくくする性質を持っています。
ノイズは周波数が高い電気の成分であるため、この性質を利用することで電気の中に混じったノイズだけを取り除くことができるんです。
まずは第一関門ですね
コンデンサの働き
コンデンサは、コイルとは逆に低い周波数の電気は通しにくく、高い周波数の電気は通りやすいという性質を持っています。
ノイズフィルターに使われているコンデンサはアース(電気を地面に逃がす線)に繋がれていて、この回路にノイズを含んだ電気を通すことで
- 綺麗な電気→そのまま機器の方へ流れていく
- ノイズ→コンデンサを取ってアースに逃げていく
このようにノイズだけを横道にそらして、機器に届かないようにしてくれているんです。
コイルとコンデンサの合わせ技だね
まとめ
以上、ノイズフィルターの役割やその種類について解説しました。
ノイズ対策には配線の分離やシールド線を使うなど他にも様々な方法がありますが、ノイズフィルターはシンプルかつ効果が高い方法のひとつです。
電源に混ざったノイズを取り除くことで、
- 機器の誤動作を防ぐ
- 周囲の機器に悪影響を与えない
- 安定した動作を長く続けられる
といった様々なメリットがあります。
ノイズの影響と思われる不具合が気になったときは、是非ノイズフィルターの使用を検討してみてください。