丸形端子とY形端子はどう違う?|それぞれの特徴と使い分けについて分かりやすく解説

産業機械や工場内設備の電気工事で欠かすことができない配線資材である「圧着端子」。
その中でも、機器の端子と端子を接続する場合において「丸形圧着端子」と 「Y形圧着端子子」がよく用いられます。
一見すると形が少し違うだけに思えますが、実は安全性や作業性、メンテナンス性などに差が出ることがあります。
丸形とY形は現場でよく見ますが、どう使い分ければいいんでしょう。。。
この記事では、丸形圧着端子とY形圧着端子の特徴やメリット・デメリット、現場での具体的な使い分けについて初心者でも分かりやすく解説しますので、是非参考にしてみてください。
ここは丸形か?Y形か?って、職人さんの間でも結構意見が分かれるよね
どちらにもメリット・デメリットがありますので、適材適所で使い分けていきましょう
圧着端子って何?
圧着端子は、インバータなどの電気機器に電線をしっかり固定しておくための、小さな金属部品のことをいいます。
電線の先端をむき出しの状態にして、そのまま接続するという方法が無いわけではありませんが、しっかりと固定出来なかったり熱を持ってしまったりと、あまり安全な接続方法ではありません。
そこで、登場するのが圧着端子です。
圧着端子は、専用工具で電線の先にかぶせて潰す「圧着」という技術を使って取り付けることで、端子と銅線が一つにまとまり、ネジ締めによって確実かつ安全に配線を接続することが可能となります
このような圧着端子の中でも、よく使われているのが「丸形圧着端子」と「Y形圧着端子」です。
それぞれの違いについて見ていこう
丸形圧着端子の特徴
丸形圧着端子は、写真のように先端が丸い形状をした圧着端子です。
丸形圧着端子は別名「R形」端子とも呼ばれ、現場の職人さんは略して「まるたん」と呼んでいることが多いですね。
端子の形番は「R○○ー△△」と表記され、○○には電線の太さ(sq)、△△には端子を止めるためのネジの太さを表しています。
例えば、「R1.25ー4」という表記であれば、電線の太さが1.25sqで、取り付ける端子ネジの太さがM4という意味になります
丸形圧着端子はネジを穴に通して端子に固定されるため、ネジを完全に抜かないと外れないというメリットがあります。
そのため、信頼性が求められる配線に使われることが多く、特に動力回路など大きな電流が流れる配線では丸形圧着端子がよく選ばれています。
会社によっては、”丸形圧着端子以外使用禁止”みたいな仕様のところもあるね
反面、端子の取り付けや取り外しについては、端子ネジを完全に外す必要があるため、若干作業効率が劣るというデメリットもあります。
Y形圧着端子の特徴
Y形圧着端子は別名「フォーク形」や「先開形」とも呼ばれている端子で、端子先端が”Y”の字のように開いているのが特徴です。
現場の職人さんは「Yたん(わいたん)」と呼んだりしますね
Y形圧着端子の場合は、先端が開いていることから端子ネジを完全に外さなくても差し込んで取り付けられるため、作業性に優れているというメリットがあります。
ただし、端子ネジが緩むと抜けてしまう可能性があるため、安全性や信頼性については丸形圧着端子の方に軍配が上がります。
上記のような特徴から、Y形圧着端子は制御回路の信号線など、流れる電流が少なく配線数が多いシーンによく使われています。
数が多いと、Y形圧着端子の方が作業効率は高くなるね
丸形圧着端子のメリット・デメリット
丸形圧着端子のメリット・デメリットについてまとめました。
丸形圧着端子のメリット
抜けにくく安全性が高い
丸形圧着端子は、端子ネジを完全に抜かないと外すことができないため、振動や衝撃がある装置でも配線が外れにくいというメリットがあります。
そのため、抜けた電線の先が別の箇所に触れ、ショートなどの事故が起こるリスクを減らすことができます。
丸形圧着端子であっても、接触不良による不具合は防ぐことができませんので注意してください
接続時の信頼性が高い
丸形圧着端子は、端子ネジを穴に入れて締め込めば確実に固定できることから、接続の信頼性が高いというメリットがあります。
危険性・重要性の高い配線でも安心して使用することが可能です。
大きな電流にも対応ができる
丸形圧着端子は信頼性の高さや接続したときの接触面積の広さといった特徴から、大きな電流が流れる配線の接続に向いています。
例えば、太い電線を扱う電源回路や動力回路等ですね。
Y形圧着端子の場合は、最大でも5.5sqぐらいのサイズしかラインナップがありませんが、丸形圧着端子の場合はそれ以上の太い電線にも対応しています。
丸形圧着端子は、小さなものから大きなものまで幅広くラインナップがあるよ
1端子への複数接続がしやすい
Y形圧着端子の場合は、接続の際に抜けないよう手で押さえながら端子ビスを締め込む必要があります。
一方、丸形圧着端子の場合は端子ビスに通してしまえば抜けにくい構造になっているため、特に狭い場所で複数の端子をまとめて接続する場合に扱いやすいというメリットがあります。
手が入りにくいような狭い場所での接続は、実は丸形圧着端子の方がやりやすかったりしますね
丸形圧着端子のデメリット
作業効率が悪くなる場合がある
丸形圧着端子は端子ビスを完全に抜かないと接続できないため、安全性や信頼性が高い反面、作業効率が落ちるというデメリットがあります。
特に制御回路など配線数が多い場合は、トータルの作業時間に差が出やすい点に注意が必要です。
外した端子ビスを落としたりすると、余計に時間が掛かってしまったりするかな
Y形圧着端子のメリット・デメリット
続いて、Y形圧着端子のメリット・デメリットについてまとめました。
Y形圧着端子のメリット
ビスを抜かなくても接続ができる
Y形圧着端子の最大のメリットは、端子のビスを完全に抜かなくても接続が可能な点です。
特に、「1端子につき1本だけ配線を接続する」場合においては、
- 端子ビスを緩める
- Y形圧着端子を差し込む
- ビスを締め付ける
という一連の作業がスムーズです。
このため、配線数の多い信号線や通信線などの接続作業を、効率良く行うことが可能です。
配線数が多いと、Y形圧着端子の方が作業は楽ですね
端子ビスを落としにくい
Y形圧着端子を接続する場合は、端子ビスを完全に外す必要がないことから、端子ビスを落としてしまうリスクを抑えることができます。
制御盤や端子箱などの狭い場所では、端子ビスを落としてしまうと電線や機器の隙間など奥まったところに入り込み、回収に余計な手間が掛かってしまうことがあります。
その点、Y形端子はある程度緩めるだけで接続ができるため、ビスの紛失トラブルを減らし、結果的に作業効率を高めることができます。
1回でもビスを落としてしまうと、探すのに一苦労なんだよね〜
Y形圧着端子のデメリット
端子から抜けやすい
Y形圧着端子は、端子ビスを完全に外さずに接続できるというメリットがある反面、端子ビスが揺るんでしまうと、配線が外れて抜け落ちることがあります。
特に振動の多い設備や、普段から点検で増し締めを行っていないような場合には、抜けた配線が別の端子に触れてショートするなどのトラブルにつながるリスクが高まります。
化学プラントなど、Y形圧着端子の使用を禁止している会社もありますね
接続の際に外れることがある
丸形圧着端子を接続するとき、ビスを端子の穴にさえ通してしまえば、ビスから外れることなく確実に接続ができ、信頼性も非常に高いです。
一方、Y形圧着端子の場合は、ビスを締め付けるときに端子を手で押さえていないと外れてしまうことがあるので、接続の確実性という点では丸形圧着端子の方に軍配が上がります。
もちろん、正しく施工すれば問題はありませんが、接続時の確認を怠ると接触不良などのトラブルが時間が経ってから発生することがあるので、注意が必要です。
特に、1端子に配線を複数本接続する場合は、確認をしっかりと行おう
このデメリットから、1端子への複数接続は丸形圧着端子の方が良いんですよね
端子が変形しやすい
Y形圧着端子は先端が細い形状をしていますので、無理矢理差し込もうとしたりすると、端子が変形してしまうことがあります。
一度変形してしまうと、端子ビスを緩めても差し込めなかったり、接続が不十分で接触不良を起こしてしまうこともあるため、十分な注意が必要です。
古い設備のY形圧着端子は変形していることが多いね
丸形圧着端子とY形圧着端子の使い分け
シチュエーションごとに、どちらの圧着端子が適しているかをまとめました。
電源回路・動力回路で使用する場合
電源ブレーカーやモーター用電磁接触器など、電流がたくさん流れる電源回路もしくは動力回路には丸形圧着端子が適しています。
そのため、信頼性や安全性を優先する場合には、丸形圧着端子を積極的に使用する方がよいでしょう。
電流が沢山流れる回路は、やはり丸形圧着端子の方が安心ですね
制御回路・信号回路で使用する場合
リレーなどの制御回路や外部からの信号線など、接続する配線数が多い場合にはY形圧着端子の方が効率よく配線作業を行うことができます。
実際、工場内設備や産業機器の制御盤においては、制御回路の配線にY形圧着端子が多く用いられています。
ただし、会社によってはY形圧着端子の使用を制限し、丸形圧着端子の使用を標準と定めている場合もあるため、必ず自社もしくは向け先のルールに従うようにしましょう。
特に、化学プラントや製鉄所での設備には厳しい基準が設けられているよ
1端子に配線を複数本接続する場合
1端子に配線を複数本接続する場合は、Y形圧着端子でも良いですが丸形圧着端子の方が作業しやすいです。
例えば、写真のようにDC24Vの電源を短い渡り線で繋いでいくときなどは、丸形圧着端子であれば手で押さえながらビスを締め付ける必要がありません。
渡り線を丸形圧着端子、それ以外をY形圧着端子というように、作業しやすいよう端子を使い分けると作業効率も良くなります。
適材適所に使い分けましょう
一時的な仮配線や頻繁に端子を着脱する場合
テスト機を接続して試運転やメンテナンスを行うなど、設備への一時的な仮配線や頻繁な端子の着脱を行う場合は、作業効率のよいY形圧着端子の方が便利です。
実際、電気技術者の中には、自作でテスト装置を製作してトラブル時の動作チェックをされる方もいて、このような場面では毎回ビスを完全に外すことなく接続できるY形圧着端子の利便性が活きてきます。
頻繁な付け外しはY形圧着端子の方が便利だね
まとめ
以上、丸形圧着端子とY形圧着端子について、それぞれの特徴や使い分けを解説しました。
丸形圧着端子は「外れにくさと信頼性」、Y形圧着端子は「作業効率の良さ」が最大の特徴です。
どちらの圧着端子もメリット・デメリットがあるため、場面ごとにどちらが適しているかを正しく選択することが非常に重要です。
それぞれの特徴を活かして、より安全かつ効率的に現場作業を進めていきましょう。
- 電源・動力回路での使用→丸形
- 制御回路での使用→Y形
迷ったら丸形圧着端子にしましょう