電気回路を開閉(入り切り)する電気部品の1つとして、「電磁接触器」と呼ばれるものがあります。
工場などでは、主に下記の用途で使われていて、設備にとって非常に重要を担っている電気部品です。
- モーターの駆動
- ブレーキの入り切り
- 機器や装置の電源入り切り
そのため、電磁接触器に不具合が発生してしまうと、モーターが正常に運転できなくなったり、装置の電源が入らなくなってしまったりと、様々なトラブルが発生する原因となってしまいます。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、電磁接触器の定期的な点検が必要不可欠です。
この記事では、電磁接触器の中でも特に重要な部分である「接点」に着目し、点検方法やその重要性について解説していきます。
なべ特に動作回数の多い電磁接触器は定期的に点検しましょう!
電磁接触器の接点とは?


電磁接触器は大きく分けて「接点」と「電磁石」と「バネ」という3種類の部品で構成されています。
「接点」は、電気回路を繋いだり切ったりするための、いわば”スイッチ“のような役割をもつ部分です。
この接点を閉じるために使われる部品が「電磁石」で、電磁石のコイルに電圧を加えることで磁力が発生し、その引き寄せる力を利用して接点同士をくっつけます。
くっついた接点を切り離すときは、コイルへの通電を止めて磁力を無くし、「バネ」の力によって接点を元の位置に戻して開いた状態にします。
このように、接点は電磁石とバネの働きを利用して電気の入り切りを行っており、電磁接触器の中でも特に重要な役割を担っています。



だから接点が悪くなると色々なトラブルが発生するんだね
電磁接触器の「主接点」・「補助接点」について
電磁接触器の接点には大きくわけて「主接点」と「補助接点」があり、それぞれの接点には次の役割があります。
- 主接点の役割
-
モーターなど、負荷の大きな装置を入り切りするための”大きな“接点
- 補助接点の役割
-
電磁接触器の動作に合わせてONもしくはOFFする”小さな“接点
主接点は、モーターなどの駆動装置に電気を送って動作させたり、設備に供給される電源を入り切りするなど、比較的大きな電流が流れる回路に用いられます。
一方、補助接点は大きな電流を流す用途には不向きですが、電磁接触器が動作していることを制御機器に伝えるなど、制御を目的とした用途で使われます。



それぞれの役割が明確に分かれています
主接点・補助接点の例
主接点及び補助接点について、1つ例を見てみましょう。
下の図の電磁接触器には「1L1」・「3L2」・「5L3」・「2T1」・「4T2」・「6T3」・「13NO」・「14NO」という8個の端子が備わっています。


端子に番号は振られていませんが、上にある2つの小さな端子はコイルの端子で、ここに所定の電圧を加えれば電磁接触器が動作します。
この電磁接触器の場合は、「1L1ー2T1間」・「3L2ー4T2間」・「5L3ー6T3間」が主接点で「13NOー14NO間」は補助接点という扱いになります。
この電磁接触器にモータを接続して回転/停止させたい場合は下記のように接続します。


電源側(R・S・T)
- Rー1L1
- Sー3L2
- Tー5L3
モータ側(U・V・W)
- Uー2T1
- Vー4T2
- Wー6T3
このように接続すると、電磁接触器が動作することで主接点が閉じてモーターは回転を始めます。
なお、電磁接触器が動作しているときに表示灯を点灯させたい場合は、補助接点を使用すると便利です。
補助接点の「NO」とは、「NORMAL OPEN(動作していない時はOFF)」という意味で、電磁接触器が動作していないときは接点が開いた状態になっています。
電磁接触器が動作すると、主接点の動きに連動して補助接点が閉じて電気が流れる状態になります。
そのため、補助接点を表示灯のスイッチとして使用することで、電磁接触器が動作している時だけ表示灯を点灯させることができます。



主接点と補助接点はこのように使い分けられているよ
なぜ接点の点検が重要なの?|接点が悪くなる原因


接点は使っていると段々と摩耗(消耗)していきます。
摩耗の原因は、接点同士が接触する時の物理的な衝撃によるものではなく、接点が離れた瞬間に発生する「アーク」による電気的なダメージが主な要因になります。
電気が空気を飛び越えて流れるときに出る、とても強く熱い火花のこと
例えば、ご家庭でドライヤーのスイッチを入れた状態でコンセントを抜くと、青白い火花のようなものがコンセントの中で発生するのを見たことがないでしょうか?
実はこの現象がアークの一種で、これと同じような現象が電磁接触器の接点のところで起きているのです。
他にも、鋼材同士を接合するのによく用いられる「アーク溶接」も、電気の火花であるアークの熱を利用して溶接棒を溶かしていますね。





青白い光がアークですね
このアークの熱を電磁接触器の接点が受け続けることで接点が摩耗し、そのまま使い続けると、電気抵抗の増加や接触不良、さらには接点同士が溶けてくっつく「溶着」などの不具合が発生する可能性が高くなります。
アークは流れる電流が大きいほど発生しやすいという特徴があり、たとえ火花が小さくても動作回数が多ければダメージは徐々に蓄積されていきます。
特に、モータの起動/停止やブレーキの入り/切りなどで使用されている電磁接触器の主接点は、アークによるダメージを受けやすいため、定期的に点検して摩耗の状態を確認することが非常に重要になります。



電磁弁やヒーターで使われている電磁接触器も傷みやすいよね
ダメージを受けた接点について


アークによってダメージを受けた接点はどのように摩耗するのか、写真を見ながら解説していきます。
新品の接点


まずは新品の状態の接点から見ていきましょう。
銅色の部品が「可動鉄心」で銀色の丸い突起があるのが「固定鉄心」です。
この状態の接点が一定期間使用するとどうなるのでしょうか。
一定期間使用した接点


一定期間使用した接点の状態がこちらです。
※可動鉄心は見やすいように取り外しています。
新品の時と比べて丸い部分が潰れるように摩耗し、表面が荒れた状態になっています。
また、接点の周辺も黒く焼けて、一部溶けている箇所も見受けられますね。
ある程度摩耗はしていますが、この状態でもまだまだ使用は可能です。



三菱電機の交換基準は「最も摩耗している接点の厚みが新品の50%以下になったとき」とのことです
交換時期に近づいている接点
痛んでいる接点を見ていきましょう。
摩耗している接点
接点が摩耗し、固定鉄心の突起が原型をとどめていない状態になっています。


可動鉄心側にも同様に円柱状の突起があるのですが、固定鉄心側と同様に摩耗して無くなりかけています。


ここまで摩耗してしまっていたら交換が必要になります。
欠けている接点
この接点は、ある程度摩耗したところで端のところが欠けてしまっています。




角が欠けているだけでなく、表面にも荒れが見受けられますね。
このような状態でもあまり長くはもたないため、なるべく早く交換しましょう。



接点は摩耗だけじゃなく、欠けることもあるんだね。。。
ダメージを受け続けた接点を使っているとどうなるか?


接点の開閉によってダメージを受け続けると、以下のような不具合が発生する恐れがあります。
接点の接触不良
接点の接触面が摩耗や破損で荒れてしまうと、接点の接触抵抗が増えたり正常に導通出来なくなるなどして、接点が接触不良の状態になることがあります。
接点が接触不良になると、モーターやブレーキが動作しなくなるだけでなく、電磁接触器の補助接点に接続した信号が出力されなくなるなど、様々な不具合が発生する可能性が高くなります。
接点の溶着
接点に短絡等の理由で高い電流が流れると、その時に発生する熱によって接点同士が溶けてくっ付いてしまうことがあります。これが「溶着」です
溶着はモーター焼損等による不具合によって大電流が流れて発生する場合が多いですが、接点の不良によって接触部が熱を持つことで発生する場合もあります。
接点が溶着すると設備が停止しないなどの誤動作が発生し、大変危険な状態になってしまうことがあります。



このような不具合を未然に防止するためにも、日頃の点検が非常に重要です!
接点の点検方法について


接点は電磁接触器のカバーを外すことで簡単に点検することができます。
以下のSTEPで点検していきましょう。
STEP1:電磁接触器の点検頻度を決める
使用している電磁接触器の台数が少ない場合は良いですが、何十台何百台と使用している場合は、全て点検するのはとても大変です。
使用台数が多い場合は、個々の電磁接触器の使用状況を洗い出して、どれぐらいの頻度で点検を行うべきかリスト化するのがおすすめです。
ポイントは以下の通りです。
- 1日当たりどれぐらい動いている(開閉している)か?
- 使用用途は何か?(電源用?orモーター用?orブレーキ用?・・・etc
1日の動作回数が多い電磁接触器の方が接点の摩耗が速いため、ブレーキやモーターなど駆動回数の多い用途の電磁接触器を優先的に点検するようにしましょう。



できれば月に1回、最低でも2〜3ヶ月に1回は点検したいですね
電源投入用といった、動作回数が少なかったり電流があまり流れない状態で入り切りする用途のものは、摩耗のスピードがとても遅いことから、点検の頻度を落としても問題はないでしょう。



動作回数の少ない電磁接触器は半年〜1年に1回でもいいんじゃないかな
これまでの故障履歴やメーカが定める開閉耐久回数を踏まえて、数年おきに定期交換しましょう。
STEP2:電源を切る
点検する電磁接触器が決まったら、安全のため電源を完全に切りましょう。
電源を切ったつもりでも、端子部分に電気がきている可能性があります。
必ず電源を切ったうえで、点検する電磁接触器の端子を検電し、安全を確認してから作業を行うようにしてください。







点検前の安全確保をしっかり行おう!
STEP3:電磁接触器のカバーを取り外す
安全な環境を確保できたら、点検する電磁接触器のカバーを取り外していきましょう。
三菱電機の場合は、電磁接触器の両端にマイナスドライバーを差し込むところがあります。


このような状態で両端の穴をこじればカバーが簡単に取り外せます。
電磁接触器のカバーやケースはプラスチック製であるため、無理にこじると割れてしまうことがありますので、慎重に取り外すようにしましょう。
なお、カバーを外す際の工具として、僕は下の写真のような工具を愛用しています。


本来はシールを取り外す為の工具なのですが、先端の形状が丁度よく、とても使いやすいので気に入って使っています。



この工具を使うと簡単にカバーを取り外すことができます
電磁接触器のカバーはこじって外すタイプのほかに、ビスを緩めて取り外すタイプなど機種によって様々な取り外し方があります。
外し方が分からないものについては、取扱説明書等で事前に確認してから作業を行ってください。
STEP4:接点を目視して点検する
カバーを外すことができたら接点を点検します。
電磁接触器の接点は影になるなどして光があまり差さないので、ハンデイライトなどの照明を使用しましょう。
「ダメージを受けた接点について」の項で見られるような著しい摩耗や接点の欠けが見られた場合は、交換計画を立てるか、予備品がある場合は交換するようにしてください。
都度、接点の写真を撮っておき、摩耗の経過を記録として残しておくのもよいでしょう。
尚、接点は必ず上側の接点と下側の接点を両方とも点検するようにして下さい。
上側の接点が問題なくとも、下側の接点が悪くなっている場合もあるからです。




下側の接点については、取り付けてある場所によっては点検しずらい場合があります。
そんな時は点検用の鏡を使うと目視しやすくなります。





照明と鏡を上手く活用すると、とても楽に点検ができるようになるよ
STEP5:カバーを戻して元の状態に復旧する
点検が終わったら、外したカバーを元通りに復旧します。
カバーが確実に取り付けられていないと、設備の稼働中にカバーが外れてしまうことがありますので、しっかりとはまっているかよく確認してください。
接点のカバーは接点にゴミ等の異物が入らないようにする為と、接点で発生したアークを消弧する役割も兼ね備えています。
点検後に不具合を発生させない為にも、カバーがしっかりと取り付けられているか、必ずチェックするようにしましょう。



復旧忘れがないようにしてください
点検が難しい電磁接触器や接点はどうする?


カバーを開けて中の接点を目視できる電磁接触器については、前項の手順で点検することが可能です。
しかし、以下のような機種や接点については目視での点検が困難です。
カバーが開かない電磁接触器


最近では、特にサイズが小さい電磁接触器については、カバーを開くことができないものが増えてきました。
カバーを開くことができないと接点が目視できないため、接点の状態を点検しながら交換時期を判断していくことが困難です。
そのため、これらの製品に対しては、「3年ごと」ないし「5年ごと」といったように、あらかじめ取替周期を決めて、接点の状態に関わらず交換するという方法が一般的にとられています。



製品の特性上、これは仕方ないよね。。。



1つ当たりの価格が安価ですので、トラブルが起こるリスクを考えると、定期交換の方が安心ですね
見えない補助接点


カバーを開けると主接点が目視できる電磁接触器でも、補助接点を見ることができない機種も存在します。
この場合は、電磁接触器の可動部を手で押して補助接点を擬似的にON状態にして、テスターで電気抵抗のチェックを行う方法があります。




特にb接点(動作時:OFF、非動作時:ON)は接触不良による不具合が発生しやすいため、注意しましょう。



補助接点を閉じたときに、抵抗値が”0Ω”に近ければ問題ないよ
- 見えない接点はテスターで電気抵抗値をチェック
- 周期を決めて定期交換することも検討しよう
まとめ


以上、電磁接触器の接点の点検方法及びその重要性について解説しました。
電磁接触器の接点は使用すると消耗していく、いわゆる「消耗品」です。
定期的な点検を確実に行うことで、接点不良に起因する不具合をある程度未然に防止することが出来ます。
電気設備はいきなり故障することも多く、電気関係の保全マンの方々におかれては毎日大変かと思いますが、この記事を今後の保全活動に活かして頂ければ幸いです。




