【超音波センサとは?】仕組み・特徴・活用方法について分かりやすく解説

「超音波センサ」と呼ばれるセンサをご存じでしょうか?
世の中には、光を使って物体を検出する「光電センサ」や、磁気の力によって金属を検出する「近接センサ」など、用途に応じた様々な種類のセンサが存在します。
超音波センサもその一種で、物体の有無だけでなく距離を測定することもできるセンサです。
超音波センサは光や磁気を使う他のセンサとは違い、”超音波“を使って対象物を検知するという点が特徴で、段ボールや金属などだけではなく、透明なガラスや水さえも安定して検出できるというメリットがあります。
こうした特性から、工場や自動化設備などでよく使われているセンサですが、いざ導入となると。。。
光電センサや近接センサとどう違うの?
どうやって使い分けたらいいの?
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そんな超音波センサの仕組みや特徴、現場での活用方法等についてわかりやすく解説していきます。
現場でのセンサ選びのご参考になれば幸いです。
いろんな種類のセンサがあるから迷っちゃうね。。。
透明な物体を検知できるメリットが大きいですね〜
超音波センサの仕組み
超音波センサとは、”超音波“を飛ばして物体の有無や距離を検知するセンサのことを言います。
センサの先端から、人間の目で見たり耳で聞いたりすることができない超音波を発信し、跳ね返って戻ってくるまでの往復時間を測定して、物体の有無や時間を測定しています。
上の図は、超音波センサが壁に超音波を発信し、反射してきたものを検知している図になります。
超音波をセンサから発信すると、一定時間後に壁に当たり、反射して更に一定時間後にセンサまで戻ってきます。
この超音波が行って戻ってくる往復時間をT[秒]、超音波の速さC[m/s]、距離をL[m]とすると次のような公式が成り立ちます。
L:距離、C:速さ(音速)、T:往復時間
この公式は、昔習った「は・じ・き」の法則で導き出されます
この公式覚えてるかな〜
今回は距離を知りたいので、下の「は(速さ)」×「じ(時間)」となり、上の式が導き出される訳ですね。
ちなみに、求めたい距離はセンサから壁までの片道の距離なので、計算式から更に1/2を掛けています。
これが、超音波センサの仕組みになります。
この仕組みのおかげで、物体の有無だけでなく距離まで正確に分かります
超音波センサのメリット
超音波センサのメリットは次の通りです。
ひとつひとつ見ていきましょう。
メリット1:非接触で検出できる
超音波センサは、超音波を物体に向かって発信して検出するセンサであるため、リミットスイッチのように対象物に直接触れる必要がありません。
そのため、機械的な摩耗が生じたり、ぶつかった衝撃で壊れたりするリスクが少ないというメリットがあります。
また、超音波自体に圧力などの力もないため、対象物に何か影響を与えるという心配もありません。
光電センサにも同様のメリットがありますね
メリット2:材質・色に左右されない
超音波センサは物体に超音波を当てて反射させているため、対象物の材質や色に左右されることがありません。
例えば、光電センサで黒色の物体を検出しようとすると、反射する光が少なくなって検出が不安定になることがあります。
これは、黒い物体が光を吸収しやすく、センサに返ってくる光の量が不足しがちになるためです。
このように、同じ非接触である光電センサは、対象物の色や材質によって検出状態が不安定になることがありますが、超音波センサは光の反射ではなく音の反射を利用しているため、影響を受けにくいというメリットがあります。
光沢のある黒が一番光電センサの苦手としている色だよ
メリット3:ホコリや汚れに強い
ホコリが多かったり汚れやすい環境においては、光電センサではレンズに汚れが付着して、誤検出などの不具合が生じることがあります。
一方、超音波センサは音波の反射を利用しているため、多少のホコリや汚れが付着していても影響を受けにくく、安定した検出が可能です。
光電センサの弱点を超音波センサは上手にカバーしています
メリット4:透明体・液体の検出に対応
光電センサで透明な物体を光電センサで検出しようとすると、物体が光を透過してしまうため、反射光がほとんど戻らず、検出が難しくなることがあります。
超音波センサが発する超音波は、対象物がガラスや水といった透明な物体であっても反射して返ってくるため、影響を受けることなく安定した検出が可能です。
ガラスや液体を検出できるのは大きなメリットだね
超音波センサのデメリット
メリットが多い超音波センサですが、少なからずデメリットも存在します。
デメリット1:柔らかい素材のものは検出しづらい
超音波センサは超音波を吸収するような柔らかい素材に対しては、検出がしづらいというデメリットがあります。
例えば、柔らかい布やスポンジなどの吸音性の高い素材は、超音波を反射せずに吸収してしまうため、戻ってくる超音波が弱くなって正常に検出ができなくなってしまいます。
このため、吸音性の高い素材を検出する場合は、別の検出方法を検討する必要があります。
吸音材に使われるスポンジなどは、まさに大敵です
デメリット2:小さい対象物は検出しづらい
超音波センサで物体を検出しようとする際、対象物が小さすぎると発信した超音波が十分に反射されず、センサまで戻ってこないことがあります。
その結果、物体の有無を正確に検出できなかったり、ムラが出たりする可能性が高くなります。
特に細い棒状のものや直径が小さい物体などは、超音波の反射面積が少ないため、超音波センサでは検出が難しくなります。
検出できる最小サイズは機種によって違うから、必ず確認しておこう
デメリット3:応答速度が遅い
光電センサは光速の”光”を飛ばして、返ってくる反射光を利用して検出を行っています。
一方、超音波センサは光速ではなく、音速の”音”を飛ばして物体を検出しています。
よって、光速ではなく音速を利用する超音波センサの方が、検出にかかる時間(応答速度)は遅くなります。
そのため、高速で動く対象物の検出や、装置の精密な位置決め制御などの用途には、超音波センサはあまり向いていません。
このようなケースでは、応答速度の速い光学系のセンサ(光電センサ・レーザーセンサ等)が適していると言えるでしょう。
「光速:時速1億790万km/h」と「音速:時速1,235km/h」の違いですね
超音波センサの導入・活用方法
超音波センサの導入事例・活用方法についてご紹介します。
フィルムの検出
光電センサなどの光学系のセンサでは、フィルムやガラスなどの透明な物体の検出は難しいものでした。
超音波センサの、透明な物体でも安定して検出できるメリットを活かせば、これらの課題をクリアすることが可能です。
超音波センサには、超音波の発信と受信が一体になっている反射形の他にも、発信と受信が別になっている透過形もありますので、設置環境に応じた最適な形のものを選びましょう。
引用先:ifm effector株式会社(UGT528)反射形超音波センサ
引用先:竹中電子工業株式会社(US-DCシリーズ)透過形超音波センサ
引用先:竹中電子工業株式会社(US-T50/US-R25)透過形超音波センサ
色んな形のものがあるから、必ず用途に合ったセンサが見付かるはずだよ
設備の衝突防止
走行しているクレーンや設備同士の衝突防止用として、超音波センサはよく使われています。
特に同じ軌道上に2台以上のクレーンや設備が走行していると、操作を誤ったときに衝突してしまう恐れがあります。
このような事故を防ぐために、お互い相手に向けて超音波センサを取り付けておくことで、相手の接近を検知したら警報を出したり、減速・停止を行ったりする仕組みに活用されています。
設備同士の衝突防止は鉄板の使い方です
タンクなどの液面検出
超音波センサのメリットを活かすことで、タンクや排水ピットに溜まっている液体の検出にも活用ができます。
液体の液面検出で代表的なものは、液体に浮かべて液面レベルの変化に応じて動作するフロートスイッチや、電極を液体の中に入れて液面レベルを検出するフロートなしスイッチなどです。
引用先:株式会社ニッポー(フロートスイッチの仕組み〜使い方から導入事例まで〜)
フロートスイッチはフロート(浮き球)が浮き沈みして、確実に接点を開閉できますが、部品が摩耗したり、フロートに汚れが体積して誤動作するリスクなどのデメリットがありました。
引用先:オムロン株式会社(フロートなしスイッチ61Fの基本構成を教えてください。)
フロートなしスイッチは、液体の中に不純物が混じったり電極棒が汚れると、動作が不安定になったり、電気を通さない液体には使用できないというデメリットもあります。
超音波センサを導入することでこれらのデメリットを解消できるほか、比較的導入しやすいというメリットがあるため、安定した液面検知を求める現場においては、有効な選択肢と言えるでしょう。
ただし、液面に泡が発生するようなケースにおいては、超音波センサでは逆に動作が不安定になる可能性があるため注意が必要です。
僕の職場では排水ピットの水面検知に超音波センサを導入したよ
高所作業車での挟まれ検知
高い場所での作業を安全かつ効率的に行える高所作業車。
この高所作業車の事故で最も多いのが、バケットに乗っている作業者が構造物などに挟まれてしまう「挟まれ」事故です。
このような事故を防ぐ為に、一般的にはバケットに「ヘッドガード」を取り付けます。
ヘッドガードはバケットに乗っている作業者を物理的に守ってくれますが、何かに接触するまで気付くことができなかったり、製品に傷を付けてしまうなどのデメリットがあります。
こうした挟まれ事故や接触を防ぐために、近年では超音波センサを活用した安全装置の導入が進んでいます。
引用先:首都高技術株式会社(高所作業車バケット接触防止感知センサー)
設置された超音波センサによって、障害物が一定距離以上接近したら、音や光で警報を出すだけでなく、自動で停止させる機能も搭載されています。
高所作業車を使用することがあれば、一度検討してみては如何でしょうか。
非接触によるメリットを上手に活かした製品です
まとめ
以上、超音波センサについての仕組みや特徴、活用方法等について解説してきました。
超音波センサは、光電センサやリミットスイッチ等と比べて目にする機会が少ないですが、メリットの多いセンサであることは間違いありません。
是非、職場で活用できそうな場面がありましたら、積極的に取り入れてみては如何でしょうか。