機械や部材を締結するボルトを購入しようと思ったとき、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。
新人まつもとボルトの長さって、どのようにして決めたらいいんでしょう?
使用するボルトの長さが不適切なものを選んでしまうと、部材が落下するなどの不具合が発生しかねません。
本記事では部材を締結する際に必要なボルト長さについて、その計算方法と重要性を解説しますので、是非参考にしてみてください。



図面に書いてあったら良いけど、そうじゃない場合はどうやって選んだらいいか分かりにくいよね



ボルトの長さが不適切だと、思わぬトラブルに発展することがあります、適正な長さを選定するようにしましょう!
適正なボルト長さの計算方法①|ボルト・ナットで締結する場合
まずは、ボルトとナットで部材を締結する際の適正長さを計算していきましょう。


上図は、橙色の部材と緑色の部材をボルトとナットで締結している様子を表したものです。
図の中に記載している記号の意味はそれぞれ次の通りです。
- a:部材と座金の厚さ
- b:ナットと座金の厚さ
- c:ナットから出ているボルトの長さ
- D:ボルトの太さ(軸の直径)
- L:ボルトの適正長さ
これらの数値を使うことで、ボルトの適正長さ「L」は次のようにして計算することができます。



計算方法はいたって単純です!
このように算出した適正な長さのボルトを選定することで、十分な締め付け強度を得ることができます。
各種座金・ナットの厚み及びピッチの目安
座金やナットの一般的な厚みやピッチを一覧表にしました。
厚みは全てmmでナットは1種、ピッチは並目としています。
| 呼び径 | 平座金 | ばね座金 | ナット | ピッチ |
| M3 | 0.5 | 0.7 | 2.4 | 0.5 |
| M4 | 0.8 | 1.0 | 3.2 | 0.7 |
| M5 | 1.0 | 1.3 | 4.0 | 0.8 |
| M6 | 1.6 | 1.5 | 5.0 | 1.0 |
| M8 | 1.6 | 2.0 | 6.5 | 1.25 |
| M10 | 2.0 | 2.5 | 8.0 | 1.5 |
| M12 | 2.5 | 3.0 | 10.0 | 1.75 |
| M14 | 2.5 | 3.5 | 11.0 | 2.0 |
| M16 | 3.0 | 4.0 | 13.0 | 2.0 |
| M18 | 3.0 | 4.6 | 15.0 | 2.5 |
| M20 | 3.0 | 5.1 | 16.0 | 2.5 |
| M22 | 3.0 | 5.6 | 18.0 | 2.5 |
| M24 | 4.0 | 5.9 | 19.0 | 3.0 |
| M30 | 4.0 | 7.5 | 24.0 | 3.5 |



上記の数値を当てはめて計算してみましょう
ボルト長さの計算例
それでは適正なボルト長さを計算してみましょう。
計算例の条件は次の通りとします。
- ボルト太さ:M10
- 部材の厚さ:合計20㎜
まずはa〜cについて計算していきます。
a:部材と座金の厚さ
部材の厚さは条件から20㎜、一般的にボルトにはバネ座金(スプリングワッシャ)と平座金(ワッシャ)を使用するので、
a=20㎜+2.5㎜+2.0㎜
=24.5㎜になります。
b:ナットと座金の厚さ
ナットの厚さは表から8.0㎜、座金はボルト側でバネ座金が入っているため、平座金1枚を使用する前提で計算します。
b=8.0㎜+2.0㎜
=10.0㎜になりますね。
c:ナットから出ているボルトの長さ
ナットから出ているボルトの長さは、通常3ピッチ(ネジ山3つ分)出るように計算します。
M10のピッチは表から1.5㎜なので、
c=1.5【㎜/ピッチ】×3【山】
=4.5㎜となります。
ボルトの適正長さLを計算する
ここまで計算してきた数値を式に代入して、ボルトの適正長さLを計算します。
L=24.5㎜+10.0㎜+4.5㎜
=39㎜
よって、ボルトの適正長さは39㎜なりますので、ボルトの首下から40㎜のボルトを選定します。



バネ座金をナット側に入れた場合でも計算結果は同じになります
適正なボルト長さの計算方法②|タップ穴にボルトをねじ込む場合
次は、タップ穴にボルトをねじ込んで部材を固定する場合です。


上の図は、タップ穴を明けた鉄製の母材に橙色の部材をボルトで固定している様子を表したものです。
図の中の記号は、それぞれ次のような意味となります。
- e:取り付ける部材と座金の厚さ
- f:ボルトの必要なねじ込み長さ
- g:タップ穴の深さ
- h:タップ穴の余裕分
- D:ボルトの太さ(軸の直径)
- L:ボルトの適正長さ
実は、ボルトをタップ穴にねじ込むとき、必要なねじ込み長さというものが存在します。
ボルトをねじ込む長さが短いと、ねじ山同士が噛み合っている量が少なくなるため、強度が弱くなります。
よって、一定以上のねじ込み長さを確保する必要があります。
このことを考慮した計算式は次の通りです。
実際に計算して確かめてみましょう。



パッと見は難しそうですが、考え方さえ理解できれば大丈夫です!
ボルト長さの計算例
それでは適正なボルト長さを計算していきましょう。
計算例は前項と同様の条件として考えてみます。
- ボルト太さ:M10
- 部材の厚さ:20㎜
- タップ穴の深さ(g):25㎜
まずはe〜hの数値を算出していきます。
e:取り付ける部材と座金の厚さ
部材の厚さは条件から20㎜、一般的にボルトにはバネ座金(スプリングワッシャ)と平座金(ワッシャ)を使用するので、
a=20㎜+2.5㎜+2.0㎜
=24.5㎜になります。
f:ボルトの必要なねじ込み長さ
ボルトの必要なねじ込み長さについては、ねじ込む部材の材質にもよりますが、一般的には1.5Dが目安と言われています。
つまり、ボルトの太さを1.5倍して出た数値が、必要なねじ込み長さというわけですね。
本例の場合はボルトの太さがM10なので、
f=10㎜×1.5
=15㎜となります。
g:タップ穴の深さ
タップ穴の深さは、ボルトの山が噛み合うタップ溝が切られている部分の長さを表します。
穴が空いていたとしても、タップ溝が切られていない部分は「タップ穴の深さ」として計算には含みませんので注意しましょう。
タップ穴の深さは、条件から25㎜になります。
h:タップ穴の余裕分
タップ穴の余裕分とは、ボルトを締め込んだときにボルトの先端が底付きしないよう、あらかじめ確保しておく余分な深さのことを言います。
ボルトの先端が底付きしてしまうと、それ以上ねじ込むことができなくなってしまいますので、ある程度のクリアランスをみておく必要があります。
今回はタップ穴の余裕分を5㎜として計算していきます。
ボルトの適正長さLを計算する
ここに至るまでに計算した数値を使って、ボルトの適正長さLを算出します。
まずは最短長さである「e+f」を計算すると、24.5㎜+15㎜ですので、足すと39.5㎜になります。
次に、最長長さである「e+g−h」を計算すると、24.5㎜+25㎜−5㎜となり、合計44.5㎜と求められます。
よって、この結果を計算式に代入すると、39.5㎜≦L<44.5㎜となりますので、ボルトの適正長さLはこの範囲に収まる規格サイズの40㎜を選定するのが最適となります。



タップ穴が貫通している場合は、タップ穴の余裕分(h)を”0㎜”にして計算することもできます
ボルトの長さが不適切だとどうなるか?


取り付けたボルトの長さが不適切だった場合、次のようなトラブルに発展する恐れがあります。
締め付け強度の不足による緩み
選定したボルトが短いとネジのかみ合い長さが少なくなる為、十分な締め付け強度が得られない場合があります。
このような軸力が低下している状態で外力が加わることで、ネジの緩みに繋がっていきます。
他の部品との干渉
逆に選定したボルトが長すぎると、ナットから突出した余剰分が他の部品と干渉してしまう恐れがあります。
特にクレーンや走行台車等の動く装置において、突出したボルトの先端に当たって破損するといった不具合がたまに見受けられます。
ボルトの長さを変える場合は、ボルトの先端がどこかに当たらないか慎重に確認するようにして下さい。
適正な長さのボルトを選定しよう


以上、ボルトで部材を締結する際の適正なボルト長さについて、その計算方法と選定の重要性についてお伝えしました。
適正な長さのボルトの在庫がなく、仕方なしに適当なボルトを使ってしまったというケースが僕の周りではよく見受けられます。
そのような状態で放置してしまうと、稼働中にトラブルが発生して客先に多大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。
ボルト長さの重要性を理解し、必ず適正な長さのボルトを使うよう心掛けましょう。


