機械に関すること

【すべり軸受けとは?】構造・特徴・転がり軸受けとの違いを初心者にも分かりやすく解説

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設備や産業機械の中で「回転する部分」には必ずと言っていいほど使われているのが、「軸受け」呼ばれる部品。

“軸受け”と聞くと、まず最初に思い浮かべるのが「ベアリング」ではないでしょうか?

ベアリングとは「転がり軸受け」のことで、中に入っているボールやコロが回転して軸をスムーズに回転させるという構造になっています。

実は、軸受けには転がり軸受けの他にも種類があって、「すべり軸受け」というものが存在します。

「すべり軸受け」とは、文字通り“すべって”軸を支えるシンプルな軸受けのことで、構造が簡単な分、設計・潤滑・材質選定などの知識が求められます。

この記事では、すべり軸受けの基本的な仕組みや特徴、転がり軸受けとの違いについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。

現場でのメンテナンスなど、基本的な知識として、ぜひ参考にしてみてください。

ひでくん
ひでくん

すべり軸受けって、金属同士なのに摩耗しないって不思議だよね〜

なべ
なべ

転がり軸受けとすべり軸受けとでは、明確な特徴の違いがあります

すべり軸受けって何?

すべり軸受けとは、軸をスムーズに回転させるために軸を支持している部品で、軸受けと軸がすべるように動くことで、摩擦を少なくして、なめらかに回るような仕組みになっています。

すべり軸受けには、主に銅などの金属や樹脂部品などが使われており、軸と接する部分がすり減りにくいような工夫も施されています。

一般的にはすべり軸受けのことを”メタルブッシュ“とか、略して”メタル“と呼ばれることが多く、産業用に限らず一般家庭で使われている家電製品などにも広く使われています。

すべり軸受けの構造と仕組み

一般的な転がり軸受けの構造

一般的な転がり軸受けの構造は次の通りです。

  • アウターレース:ベアリングの外側にあるリングのこと
  • インナーレース:ベアリングの内側にあるリングのこと

転がり軸受けは、アウターレース(外輪)・インナーレース(内輪)・ボール(球)で構成されていて、ボールが中でぐるぐると回ることで、それぞれのリングがスムーズに回転するようになっています。

アウターレースはハウジング(機械本体)に固定される部分で、インナーレース(内輪)は軸に取り付けられて一緒に回転する部分です。

なべ
なべ

ボール部分はコロ状であったり、針状であったりと、種類によって様々です

すべり軸受けの構造

一方、すべり軸受けは次のような構造になっています。

すべり軸受けについても、転がり軸受けと同じでハウジングの中に組み込まれており、その中に軸を通すことで回転させることができるようになっています。

すべり軸受け本体は下の写真のように筒状の形状をしていて、軸受けはハウジングに”きつく”はめ込むことで固定されています。

すべり軸受けのサイズは、軸の太さや支持できる加重によって膨大な数の種類があります。

ひでくん
ひでくん

銅系色以外にも銀色系など、本当に沢山の種類が存在するよ

すべり軸受けは、固定されているハウジングに組み込んで軸を回転させる構造のものや、

軸を固定して、回転するスプロケットなどに取り付けたりすることもあります。

なべ
なべ

転がり軸受けと同様、様々な使い方がされていますよ

すべり軸受けの仕組み

すべり軸受けは軸を直接支持しているため、「金属同士なのに大丈夫?」と不思議に思う方がいるかと思います。

実は、すべり軸受けと軸の間には少しの隙間があいていて、この隙間に油分などの被膜があることで部品同士の摩擦を軽減しています。

この軸受けの内側と軸との隙間はサイズによって変わりますが、0.02㎜〜0.05㎜ぐらいが相場となっています。

ひでくん
ひでくん

隙間と言ってもものすごく小さいんだね

すべり軸受けのメリット

ベアリングなどの転がり軸受けと比べて、すべり軸受けには次のようなメリットがあります。

長寿命

転がり軸受けは、アウターレースとインナーレースをボールなどで支持して回転させていることから、すべり軸受けと比べて部品点数が多く、構造もやや複雑です。

一方、すべり軸受けはボールなどの転動体が無く、非常にシンプルな構造をしているため、壊れにくく耐久性に優れるというメリットがあります。

また、軸受けと軸は直接接触していないことから、適切に潤滑されていれば摩耗しにくく、長期間に渡って使用する出来る点も、すべり軸受けの大きな特徴です。

なべ
なべ

何十年も前のものでも、全く摩耗していないものが沢山あります

高荷重に耐えられる

転がり軸受けの外輪及び内輪は、中のボールによって”点”で支えられています。

そのため、局所的に力が集中して掛かることになり、荷重が大きくなると点で接触している部分の圧力も非常に高くなってしまいます。

一方、すべり軸受けの場合は、“点”ではなく”面”で支えるので、荷重が分散してより高い圧力にも耐えることができます。

この”点”ではなく”面”で支えるという構造によって、衝撃荷重にも強いというメリットもあります。

ひでくん
ひでくん

これは転がり軸受けにはないメリットだね!

サイズを小さくできる

転がり軸受けの場合は、高い荷重に耐えるためにはある程度の大きさ(外径や幅)が必要になります。

すべり軸受けの場合は”面”で支える構造であるため、コンパクトなサイズでも大きな荷重に耐えることができます。

そのため、スペースが限られる場合や、小形化が求められる設計においては、すべり軸受けの方が有利になるケースも多くあります。

なべ
なべ

設計者の方にとっては嬉しいメリットですね

転がり軸受けよりも低コスト

転がり軸受けは部品点数が多く、組み立てにも手間が掛かるため、どうしても製作コストが高くなりがちになってしまいます。

すべり軸受けの場合は、とてもシンプルな構造なので、加工や組立の工程も少なく、転がり軸受けに比べてコストを抑えやすいというメリットがあります。

特に部品点数の多い設備や量産製品の製造においては、このコスト差が製品価格や原価に直結します。

すべり軸受けのデメリット

続いて、滑り軸受けのデリットについてみていきましょう。

高速回転の使用には向かない

すべり軸受けは”面”で支えているところから、軸受けと軸との接触面積が大きくなるため、転がり軸受けと比べると摩擦係数が大きくなります。

摩擦係数とは?

物と物が接しているときに、どれぐらいすべりにくいかを表した数値

摩擦係数が大きくなると高速回転時に熱を持ちやすくなるため、隙間にある潤滑成分が劣化し、焼き付きなどの不具合が発生することがあります。

また、軸と軸受けとの間にわずかな隙間があることから、高速回転すると芯ブレ(軸の中心がブレてしまう現象)の影響を受けやすくなる点も、高速回転が向かない要因の一つとなっています。

ひでくん
ひでくん

すべり軸受けの許容回転数は、種類によって異なるから注意しよう

定期的な給油が不可欠

すべり軸受けは、軸と軸受けの隙間に形成される油膜によって、なめらかな動作が保たれています。

この油膜があることで、金属同士が直接接触しないため、摩耗や発熱を抑えることができます。

しかし、油分が不足したり完全に無くなってしまうと、摩耗が急激に進行したり、最悪の場合焼き付きなどのトラブルに発展することがあります。

このようなトラブルを防ぐためにも、油膜が切れる前に定期的な給油が不可欠です。

無給油でも使えるオイレス工業のすべり軸受け

すべり軸受けは定期的な給油が基本ですが、オイレス工業製のすべり軸受けは、軸受け本体に潤滑成分を内蔵しているため、無給油でも長期間使用することが可能です。

引用先:オイレス工業株式会社(オイレス ♯500SP5 薄肉)
なべ
なべ

このシリーズは、固体潤滑剤が埋め込まれていて、無給油でも油膜を長期間形成し続けてくれます。

引用先:オイレス工業株式会社(オイレス #2000S)
ひでくん
ひでくん

パッと見、普通のすべり軸受けに見えるけど、油成分がしっかりと含ませてあるよ!

すべり軸受けをご検討の際は、是非チェックしてみてください。

まとめ

以上、すべり軸受けの構造やその特徴、転がり軸受けの違い等について解説いたしました。

すべり軸受けは構造がシンプルでコストを抑えやすく、低速・高荷重の用途に適した製品です。

その反面、高速回転にはあまり適しておらず、定期的な給油が必要という注意点もあります。

すべり軸受けと転がり軸受け、それぞれにメリット・デメリットが存在します。使用する環境や目的に応じて最適なものを選ぶようにしましょう。

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ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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