電気工事をするうえで欠かせない資材の1つ、それが結束バンドです。
結束バンドはインシュロックやケーブルタイ、タイラップ等色々な呼び名がありますが、基本的には同じものになります。
ホームセンターに行くと沢山結束バンドが売られていますが、一見するとどれも色以外は同じように見えます。でも実は結束バンドには種類があって、それぞれ使用目的によって用途が異なります。
この記事ではそんな結束バンドの種類とその違いについてお伝えしていきます。
ひでくん結束バンドって沢山種類があるよね〜



用途によって使い道が異なりますので、種類や違いを理解しましょう!
結束バンドのメーカー


結束バンドは様々なメーカーから製造・販売されています。
ヘラマンタイトン(HellermannTyton)
一番メジャーなのがこの「ヘラマンタイトン」製の結束バンド。
結束バンドのことを”インシュロック”と呼ぶ方が非常に多いですが、実は「インシュロック(INSULOK)」とは、このメーカーが製造している結束バンドの製品名なんです。



“インシュロック”ってヘラマンタイトンの商品名だったんだね
ABB
「タイラップ(Ty-Rap)」という製品名で結束バンドを製造しているのがこの「ABB」というメーカーです。
タイラップは元々「トーマス&ベッツ(Thomas&Betts)」というメーカーが製造していましたが、2012年にABBに買収されたそうです。
タイラップが実は結束バンドの元祖とされていて、それを1958年に開発したのが「トーマス&ベッツ」社です。
以降60年以上長きに渡り、未だに現場で使われ続けてきているのは凄いですね。
オーム電機
ホームセンターで比較的お手頃価格で販売されている結束バンドの1つが、この「オーム電機」製の結束バンドです。
ホームセンターに行くといろいろなメーカーの結束バンドが売られていますが、やはり価格面で「オーム電機」製の結束バンドに目が行ってしまいますね。
「ヘラマンタイトン」製のインシュロックと迷った時は、その店のプライベートブランド品かオーム電機製のものを選んでしまうという方も多いのではないでしょうか。
ただ、安いとはいっても耐久性は悪くない製品です。



やっぱり、一番選ばれているのはヘラマンタイトンでしょうか
結束バンドの種類ってどんなものがあるの?
結束バンドには用途や機能性に応じて様々な構造のものが販売されています。
一般的な結束バンド


よくある最もポピュラーな形をした結束バンドが写真のようなものになります。
サイズ展開が豊富にありますので、幅広い用途に使用できる一番使いやすいタイプがこの結束バンドではないでしょうか。
結束バンドはヘッド部分にバンドの先端を挿入して引っ張ることで、中の爪が返しのような役割をして反対方向に引っ張っても抜けなくなります。
この構造により電線やケーブル等を束ねてループ状にして引っ張ることで固定することができるわけですね。









白色や黒色だけじゃなく、黄色や緑色などカラーバリエーションも豊富だよ
スレンレス爪ロック式結束バンド
引用先:ABB(高性能結束バンド Ty-Rap)
一見すると普通の結束バンドですが、バンドをロックする為の爪にステンレス素材を採用しているのがこのタイプです。
ABB製の「タイラップ」がこの機構を採用しており、これによってバンドを無段階でロックすることができます。



一般的な結束バンドは、ロックするときに「カチカチ」と音がしますが、このタイプは音がしません
普通の結束バンドは爪が引っ掛かるギザギザ部分で固定位置が決まってしまいますが、ステンレス爪ロック式は任意の位置で固定できるというメリットがあります。
爪の素材がステンレスなので、耐久性が高いのも特徴の1つです。



微妙な締め具合の調整に便利だね!
金属製結束バンド
引用先:株式会社タカチ電機工業(ステンレス結束バンド SCTシリーズ)
金属製結束バンドは樹脂素材が使われておらず、全てステンレススチールで作られているのが特徴です。
一般的な樹脂製の結束バンドよりも耐久性や強度が高い為、屋外環境下での使用や重量のあるものの結束など、様々な場面で威力を発揮します。


金属製結束バンドには、ロック部分の機構の違いによっていくつかの種類があります。
ボールロック式
引用先:ヘラマンタイトン【メタルタイ(STB・MBTタイプ)】
引用先:株式会社 名取製作所(ステンレススチールバンド)
「ボールロック式」はヘッド部分の中にボールが組み込まれていて、バンドを挿入して引っ張るとボールが食い込んで強固にロックされるという仕組みになっています。
手で引っ張って結束することももちろん出来ますが、よりしっかりと固定したい場合は専用工具を使うことで更に強く引き締めることも可能です。
パンチロック式
引用先:ヘラマンタイトン(メタルタイ・パンチロックタイプ)
ヘラマンタイトン製のパンチロックタイプは、所定の強さまでバンドを引き締めたあとに、ヘッド部分とバンドとをパンチ加工によって固定するという結束バンドです。
専用工具が必ず必要になりますが、引き締める強さを一定にできることや、振動などによるバンドの緩みが発生しにくいといったメリットがあります。
ねじ式


ねじ式は、ヘッド部分のネジを回すことでバンドがどんどん締まっていくという構造の結束バンドです。
家庭では水道のホースを蛇口に取り付ける際に使われていたりしますね。
他にも、電信柱や金属製のポールに箱体を取り付ける場合にもよく使用されます。
引用先:株式会社タカチ電機工業(ネジ式ポール固定用ステンレスバンド SNBシリーズ)



金属製の結束バンドは種類が非常に豊富ですね
リリースタイプ
引用先:MonotaRO.com:リリースタイ
リリースタイプは、ヘッドにあるリリースレバーを押しながら引っ張ることで、一度通したバンドを取り外すことができる結束バンドです。
下図のようにヘッドの部分にリリースレバーがあり、これを押すことで爪がギザギザから離れてフリー状態になるという構造をしています。
引用先:ヘラマンタイトン(リリースタイ)
リリースタイプは何回も取り外したり結束したりができるので、例えば仕事で使う延長ケーブルを束ねておいたり、ケーブルを仮止めしておく時など、様々な場面に活用ができます。



装置の配線を整線する用途には少しもったいないかな〜
結束バンドの素材とその違いについて


結束バンドは構造の違いだけでなく、使用されている素材にも様々な種類があります。
材質の違いによって、それぞれ異なる特性を持った製品がラインナップされています。
ナイロン
結束バンドの材質で一番多いのがナイロン製のものになります。
同じナイロンと言っても数種類有り、それぞれによって特性が異なります。
ナイロン66
ナイロン製の結束バンドの中で最もメジャーな材質なのがこの「ナイロン66」。
ナイロン66は様々な外的要因に対して耐久性が高いバランスの取れた材質である為、最も結束バンドに適した素材と言えます。
同じナイロン66製でもグレードによって、より耐熱性や難燃性、耐候性に特化して作られた製品がラインナップされています。
ナイロン46
ナイロン46はナイロン66比べてより耐熱性に優れた素材です。
ナイロン11
ナイロン11はヒマシ油を原料とした植物由来の素材です。ナイロン66と比較して耐熱製は少し劣りますが、耐候性や低温環境下での衝撃性に優れているので、急激な温度変化が生じる屋外などに適した素材となっています。
フッ素樹脂
フッ素樹脂は耐候性と耐熱性、そして耐薬品性に優れた特性を持った素材です。
その為、医療機器や化学プラント等の用途に適していると言えます。
フッ素樹脂にもいくつか種類があります。
FEP
FEPは耐薬品性を持ちながら連続使用温度が200℃という耐熱性を併せ持っています。
同時に、様々な環境下での耐食性にも優れたとても性能の高い素材です。
PVDF
PVDFは他のフッ素樹脂素材と比較して少し耐熱性が劣ります(連続使用温度150℃)が、耐薬品性と機械的強度に優れた素材となっています。
PFA
PFAも他のフッ素樹脂素材と同様に耐薬品性を持っていますが、最大の特徴は高い耐熱性です。連続使用温度が260℃とトップクラスの耐熱性をほこっています。
ETFE
ETFEは他のフッ素樹脂素材と比較して耐熱性は劣りますが耐寒性に優れています。
ポリエーテルケトン(PEEK)
ポリエーテルケトンは樹脂素材の中でも高い機能性をほこり、耐熱性・耐薬品性・難燃性、そして高い機械的強度など非常に優れた特性をもっています。
燃焼したときの発煙が少なく、有毒ガスの発生も少ないという特徴もあります。
非常に優れた素材ではありますが、耐候性に劣ることや高価であるというデメリットも存在します。
ステンレススチール
結束バンドの種類の項でもご紹介しましたが、結束バンドには樹脂素材だけでなくステンレス製のものもあります。
ステンレス製の結束バンドは高い引張強度もさることながら、その高い強度と耐久性から地中埋設などの厳しい環境下で実力を発揮します。



用途に応じた素材を選ぶことも、結束バンド選びには大切だね
色の違いでも特性が異なる?|黒色と白色の違いについて
ナイロン製の結束バンドの色には、大きく分けて白色の結束バンドと黒色の結束バンドが存在しますが、実はこの2つで大きな違いがあります。




黒色の結束バンドのナイロン素材には、紫外線遮蔽材として「カーボンブラック」という炭素の微粒子が添加されています。
これにより、紫外線による劣化が抑えられ、長期間にわたって屋外での使用に耐えられるという特徴があります。
そのため、結束バンドを選ぶ際は特に色へのこだわりが無ければ、様々な使用環境に対応ができる黒色の結束バンドを選ぶ方が無難と言えるでしょう。
屋内の場合でも、窓から入ってくる紫外線に少なからず影響を受けますので、白色と黒色で迷ったら黒色を選ぶことをおすすめします。
一方、白色の結束バンドは黒色の結束バンドと比べて色の主張が少ないため、結束後の外観が美しいというメリットがあります。
耐久性を重視するのであれば黒色、外観を重視するなら白色と、用途に応じて適切な色を選んでください。



制御盤内の電線を結束する際は、白色の結束バンドが好まれていますね
シーンに合った結束バンドを選びましょう


以上、結束バンドの種類とその違いについてお伝えしました。
一口に結束バンドと言っても形状や材質など多種多様の製品があります。
材質の特性を考慮し、オーバースペックにならないようコスト面も考えながら、現場の環境に合った結束バンドを選ぶようにしましょう。










