【移動ケーブルって何?】構造や特徴など、一般的なケーブルとの違いについて分かりやすく解説

製造現場や自動化ラインなど、動く機械や設備には欠かせないのが「移動ケーブル」です。
移動ケーブルとは、まさに”移動“するケーブルのことで、動く機械の電源や制御用の信号を確実に届けるために、繰り返される曲げやねじれ、外的ストレス等に耐えることが求められます。
この記事では、移動ケーブルは普通のケーブルと何が違うのか、構造や使い方などの基礎的な知識を分かりやすく解説していきます。
現場でのケーブル選びなど、何かの参考にして頂けると幸いです。
移動ケーブルって、一見したら普通のケーブルとは見分けが付きにくいかもしれないね
“移動”する機械に普通のケーブルを使ってしまうと断線の原因になります、特徴をしっかりと理解しましょう!
移動ケーブルとは?
移動ケーブルとは、「移動電線」や「移動機械用ケーブル」とも呼ばれ、動く機械に電気や信号を供給するために、機械の動きに合わせて一緒に動くケーブルのことを言います。
例えば、ガーダーにぶら下がっているホイストがあるとします。
図1では、ホイスト本体に固定された配線が接続されているため、ホイストを動かした瞬間に配線がちぎれてしまいます。
これではホイストを動かすことができませんね。
一方、図2ではホイストに移動ケーブルが接続されているため、ホイストの動きに合わせて一緒についてきてくれます。
ケーブルが移動してついてきてくれることで、ケーブルの届く範囲であればホイストはガーダーを自由に行き来することができます。
これが移動ケーブルの役割になります。
移動ケーブルは、色々な仕組みを使って動く機械についてくるように工夫されているよ
移動ケーブルと一般的なケーブルは何が違う?
移動用で使われるケーブルと一般的なケーブルでは何が違うのでしょうか。
特徴の違いについてまとめました。
違い①:移動ケーブルは繰り返しの曲げに強い
一般家庭のコンセントや照明等では「VVFケーブル」がよく使われ、また、工場設備などの電気配線では「CVケーブル」が主に使用されます。
引用先:㈱フジクラ・ダイヤケーブル(電力ケーブル)CVケーブル
これらのケーブルは、内部の導体(電流を流す銅の線)の1本1本が太く、針金のように固いため、柔軟性が低く曲がりにくい構造になっています。
VVFケーブルの導体はまさに太い”針金”です
これでは、何回か曲げたり伸ばしたりを繰り返すと、ポキッと折れてしまいますね。
また、これらのケーブルでは「架橋ポリエチレン」という素材が使われているのですが、この素材は絶縁性や耐熱性に優れている反面、比較的固い素材であるため、やはり繰り返しの曲げには弱いという弱点があります。
一方、移動ケーブルは、内部の導体の1本1本が細く作られている「より線」で構成されているため、非常にしなやかで柔軟性にとても優れています。
さらに、シースや絶縁体には、ゴムやビニールといった柔軟性の高い素材が使われているため、繰り返しの曲げや動きに強いという特徴もあります。
何度も曲げたり動かしたりしても大丈夫なこの”柔軟性“が、移動ケーブルならではの特徴だよ
特徴②:耐摩耗性が高い
CVケーブルなどの架橋ポリエチレン素材は、絶縁性には優れているものの、耐摩耗性はそれほど高くはありません。
一方、移動ケーブルで使われるゴム素材やビニール素材は、柔軟性に優れているだけでなく耐摩耗性にも優れているという特徴があります。
このため、擦れや衝撃に強く、移動や屈曲を伴う過酷な環境でも耐えることができます。
柔軟性だけでなく”耐摩耗性”といった強度が高い点も、移動ケーブルの大きな特徴の1つです
移動ケーブルにはどんな種類があるの?
移動ケーブルには様々な種類があります。代表的なものをいくつか見ていきましょう。
キャブタイヤケーブル
「キャブタイヤケーブル」とは、移動ケーブルとしては最もポピュラーな種類のケーブルです。
キャブタイヤケーブルには大きく分けて次の2種類があります。
ビニルキャブタイヤケーブル
ビニル素材をシースや絶縁体に使用したキャブタイヤケーブルです。
引用先:橋本興産株式会社(キャブタイヤケーブルについて)
柔らかくてとても使い勝手が良いケーブルですが、ゴム素材のケーブルと比べると耐候性に劣るというデメリットがあります。
そのため、主に屋内設備の移動用ケーブルとして広く用いられています。
ビニルキャブタイヤケーブルには用途に応じていくつか種類があり、特によく使われるのが以下の2つです。
- VCT:600V以下の電圧で使用される(機械の電源、動力など)
- VCTF:300V以下の電圧で使用される(小型機器、制御信号など)
VCTFケーブルは、正式には「ビニルキャブタイヤコード」だよ
ゴムキャブタイヤケーブル
ゴム素材をシースや絶縁体に使用したキャブタイヤケーブルです。
引用先:橋本興産株式会社(キャブタイヤケーブルについて)
ゴムキャブタイヤケーブルは、ビニルキャブタイヤケーブルよりも耐摩耗性や耐衝撃性が優れているため、屋外クレーンや港湾設備、鉱山など過酷な環境下で広く使用されています。
ゴムキャブタイヤケーブルにも様々な種類がありますが、代表的なものは次の通りです。
- 2PNCT:一般的な移動用ケーブルとして、屋外内問わずよく使用されている
- 3PNCT:2PNCTに補強層を加えたケーブル、過酷な現場の使用に適している
他にも、中に銅線を織り込んで引っ張り強さを向上させた、カーテン方式用ゴムキャブタイヤケーブルなど、用途に応じた様々なケーブルが存在します。
メーカーによっては、2PNCTに相当する古河電工の「2TC Light」など、形番が微妙に異なる場合もあります
エレベータ用ケーブル
エレベータ用ケーブルは、その名の通りエレベータへの制御信号や電力供給に使われる移動ケーブルです。
引用先:伸泰国際(エレベーターケーブル)
エレベータケーブルの最大の特徴は、優れた耐屈曲性・引張強さ・捻(ねじ)れにくさにあります。
エレベータは一日に何度も上下動を繰り返すため、使用されるケーブルは高い耐屈曲性が求められます。
また、エレベータが高層階まで上昇する場面においては、ケーブルの自重による引張力も大きくなるため、高い引張強さも必要不可欠です。
エレベータケーブルには、内部に芯材や補強材が組み込まれていて、これによって高い引張強度を確保しています。
さらに、心線の配置やケーブルの構造に工夫が施されていて、長期間使用しても捻れが起きにくく、安定した性能を維持できる点も大きな特徴となっています。
エレベータケーブルは、一般的に写真のような平形ケーブルがよく使われますが、丸形ケーブルを製造しているメーカーもあります。
ケーブルが平べったいのには理由があるんだね!
ロボットケーブル
ロボットケーブルとは、これもその名の通り、ロボットの移動用に特化したケーブルのことを言います。
ロボットは、複雑な動きを高頻度で行うため、優れた耐屈曲性だけでなく、高い耐久性も求められます。
引用先:沖電線株式会社(ORPケーブル・シリーズ)
外装には耐摩耗・耐油・耐熱性に優れた素材が使用されており、日々動き続けるロボットの性能維持に長期間貢献してくれています。
また、ノイズ対策としてシールド構造を備えたタイプも多く、ノイズの発生しやすい動力ケーブルと混在していてもノイズが乗りにくく、安心して使用できるのも大きな特長です。
キャブタイヤケーブルなど、一般的な移動ケーブルと比べるとやや高価ですが、そのぶん耐久性に優れた非常に信頼性の高いケーブルです。
ロボット以外の用途でも使うことは可能ですよ
まとめ
以上、移動ケーブルと一般的なケーブルの構造や特徴の違いについてお伝えしました。
移動ケーブルと一口に言っても、使う場所や目的によって様々な種類があります。
ここでご紹介したケーブルはほんの一部です、他にも沢山のケーブルがラインナップされていますので、是非各メーカーのホームページをチェックしてみてください。
ご自分のニーズにぴったり合ったケーブルが見付かるはずです。