【グリースの1番と2番の違いとは?】現場での使い分けについて分かりやすく解説

機械をスムーズに動かしたり、金属の摩耗を防ぐ為に欠かせない”グリース“。
機械メンテナンスを行っている方にとっては、まさに必須の資材と言えるでしょう。
そんなグリースですが、ラベル等をよく見ると「1番」や「2番」、あるいは「№1」や「№2」といった数字の表記を見たことがないでしょうか?
ここで、このような疑問が生まれます。
グリースの”1番”と”2番”って何が違うの?
どっちも同じように見えるんだけど。。。?
実はこの数字はグリースの”ちょう度(硬さ)“を表していて、使う場所や条件によって向き不向きがあるんです。
この記事では、グリースの表記の違いや現場で迷わないための選び方のポイントについて、分かりやすく解説していきます。
正しいグリース選びは、機械の性能維持やトラブル防止にも繋がります。ぜひ最後までチェックしてみてください。
確かに、見た目じゃあまり違いが感じられないよね〜
よく使われるのは”2番”の方ですね
グリースの「ちょう度」とは?
「ちょう度」とは、グリースの柔らかさや硬さを数値化した指標のことで、簡単に言うと”どれぐらいドロドロしているか“を表したものです。
このちょう度は「NLGI番号」と呼ばれる国際基準で以下のような数値で表現されます。
NLGI番号 | 状態 | 主な用途 |
№000 | ほぼ液状 | ギアケース等 |
№00 | サラサラの半液体 | 密閉ギア等 |
№0 | とても 柔らかい | 低温機器等 |
№1 | 柔らかい | 寒冷地、 集中給脂等 |
№2 | 標準的 | 一般的な機械 |
№3 | やや硬い | 高温環境 |
№4 | かなり硬い | 特殊環境 |
このNLGI番号の”№○○”がグリースの1番・2番や№1・№2を表していて、数値が少なくなるほど柔らかくなり、逆に数値が大きくなると硬くなります。
食べ物で例えると。。。
NLGI番号 | 食べ物 | イメージ |
№000 | コンソメスープ | |
№00 | シチュー | |
№0 | マヨネーズ | |
№1 | 常温マーガリン | |
№2 | 常温バター | |
№3 | 冷たいバター | |
№4 | スジャータのアイス |
このような感じでしょうか。
ちょっと、イメージわきにくいかな。。。💦
一般的には、このちょう度が1番(№1)もしくは2番(№2)のグリースがよく市販されています。
グリースのちょう度は何で決まるの?
グリースの1番と2番のちょう度は、使われている「増ちょう剤」の量によって決まります。
増ちょう剤の量が多ければ硬めのグリースになりますし、少なければより柔らかいグリースになります。
この増ちょう剤があることで、もともと液状だった油がグリース形状になるため、塗布したときに垂れにくくなったり、長持ちしやすくなるなどの効果があります。
使用される増ちょう剤には石けん系や非石けん系など様々な種類があり、耐水性や耐熱性などの性能が変化します。
グリースの1番と2番の具体的な違い
グリースの1番と2番ではどのような点が違うのかをまとめました。
比較項目 | 1番(№1)グリース | 2番(№2)グリース |
ちょう度 (硬さ) | やや柔らかい | 標準的 |
低温特性 | 良好 (特に寒冷地) | 少し硬くなる |
使いやすさ | 少し垂れやすい | 使いやすい |
用途 | 給脂装置、 高回転部等 | 汎用ベアリング、 スライド面等 |
使いやすいのは、やはり”2番”の方ですね
1番と2番のグリースの使い分けについて
1番のグリースと2番のグリースの使い分けについてご紹介します。
1番グリース
1番のグリースは、次のような場面での使用が有効的です。
冬場や寒冷地など、気温の低い場所にある機械
グリースなどの油脂類は気温が低くなると粘度が上がるため、硬くなる傾向にあります。
そのため、冬場や寒冷地などで普段と同じグリースを使っていると、動きが重く感じるということが起こりえます。
1番はもともとが柔らかめのグリースであるため、冬場や寒冷地などの使用環境では2番に近い硬さになり、適度な潤滑性能を得ることができます。
冬と夏でグリースの番手を変えることもあるね
高速回転機器での使用
柔らかいグリースは粘性抵抗が小さく高速域でも発熱しにくいという特性があることから、高速回転する機器の潤滑用として適しています。
例えば、グリース潤滑のギヤードモーターやギアボックスなどですね。
ただし、メーカーによっては指定のちょう度が2番の場合もありますので、使用する前に必ず取扱説明書等で確認しておきましょう。
グリースの種類とちょう度は必ず確認しましょう!
集中給油装置での使用
集中給油装置とは、複数の機械部品にまとめて給脂することができる仕組みのことを言います。
1つの給脂源から複数箇所へグリースを分配する場合、このような集中給脂装置が使用されます。
こうした装置では細く長い配管を通してグリースを送り出す必要があるため、流しやすく粘度の低いグリースが適しています。
そのため、使用されるグリースはちょう度が0番もしくは1番の柔らかいグリースが多く用いられています。
集中給脂装置はメンテナンスする人にとって有りがたい存在だよね
2番グリース
2番グリースは一般的な使用環境において幅広く使える、いわば”万能型“のグリースです。
常温環境での機械全般
2番グリースは特に高温・低温といった過酷な環境でなければ、ほとんどの機械設備・箇所に使用することができます。
適度な硬さ(ちょう度)をもっているため、スライド面に塗っても垂れ落ちにくく、長時間とどまって潤滑性能を維持してくれます。
「塗布する」ためのグリースを選ぶのであれば、2番のグリースを選んでおけば大きく失敗することはないでしょう。
迷ったらやはり2番ですね
汎用ベアリングへの給脂
汎用のベアリングについては、ほとんどの場合最初から充填されているグリースは2番になります。
これは、一般的な使用環境下においては2番のグリースが安定した潤滑性能を発揮できるためです。
そのため、後からグリースを補給する場合は、基本的に同じ2番のグリースを使用するのが望ましく、ちょう度が異なるグリースを不用意に混ぜるのは避けた方がよいでしょう。
使用するグリースは、リチウム系かウレア系などの種類も合わせて確認しておこう
使用時の注意点について
1番もしくは2番のグリースを使用する際の注意点についてご紹介します。
柔らかすぎるグリースは垂れてしまうことがある
夏場などで柔らかいグリースを使用すると、気温によって粘度が落ち、垂れたり周辺に飛び散ったりすることがあります。
特に製品を直接取り扱うような機器の場合は、飛び散ったグリースで製品を汚してしまう恐れがあるため注意が必要です。
2番以上のグリースを使用するか、飛散防止などの処置が必要になります
混ぜると性能が低下する恐れがある
異なる種類やちょう度のグリースを混ぜてしまうと、性質が変化してしまい、本来の潤滑性能を発揮できなくなる恐れがあります。
たとえば、使用できる温度の範囲が変わったり、油分が分離しやすくなってしまうなどですね。
そのため、グリースを塗布したりベアリングやギアケース内に充填するような場合は、必ず同一銘柄のグリースを選定するようにしましょう。
なにごとも、混ぜるのはあまり良くないよね
用途にあった番手を選ぼう
以上、グリースの1番と2番の違いや使い分けについて解説しました。
グリースの1番と2番は見た目はよく似ていますが、使用環境によって向き不向きがあります。
何となくで使用していると、知らないうちに機器の寿命を縮めてしまっているかもしれません。
機器の寿命は日々の最適なメンテナンスによって大きく左右されます。是非、本記事を参考にして、今後のグリース選びにお役立てください。