機械設備において、減速機は欠かすことのできない重要な装置です。
減速機とは、入力軸に繋がっているモータの回転を複数の歯車(ギア)を使って減速し、出力軸から取り出すための装置を指します。
言いかえると、モーターの回転をギアの力で変速する”トランスミッション”のようなものですね。
減速機はただモータからの回転数を落とすためだけではなく、減速比に応じたトルクを得るという役割を持っています。
モーターの回転数をどれぐらい小さくするかを表す割合のこと
このような重要な役割を担う減速機を、長期間安定して使用するために重要な存在が「潤滑油」です。
本記事では
- 潤滑油が減速機にとってなぜ欠かせないのか?
- 適正に潤滑油を管理しないとどのような影響があるのか?
これらについて、分かりやすく解説していきます。
ひでくん減速機にとって潤滑油って僕たちで言う”血液”みたいなものだね



日々の点検をしっかり行って適正に管理していきましょう!
潤滑油の役割


減速機にとって潤滑油は以下のような役割があります。
歯車の保護
減速機の中には沢山の歯車が入っており、その歯車が噛み合うことでモータからの回転を減速させています。
この金属の歯車同士が直接当たってしまうと、摩耗や損傷の原因になってしまいます。


潤滑油は、歯車の表面に薄い油膜を形成することで、金属同士が直接接触するのを防ぐ役割を果たしています。
適正な潤滑油を使用することで、歯車の摩耗を最小限に抑え、焼き付きなどの深刻な損傷が発生しにくくなります。



金属同士が直接触れてしまうと、摩耗は一気に進みます


摩擦損失の低減
金属の歯車同士が直接噛み合ってしまうと、歯面に大きな摩擦が発生し、エネルギーの損失が生まれます。
この摩擦による損失が増えてしまうと、歯車の伝達効率が低下し、機械全体がスムーズに動かなくなってしまいます。
適正な潤滑油を使用することで、歯車同士の摩擦損失を抑え、滑らかな動作を維持するとともに、摩擦による熱の発生を防ぐ効果も期待できます。



減速機以外の装置の寿命にも影響するよ
錆発生の防止
鉄は空気中に含まれる酸素や水分と結合することよって錆が発生します。


これは、減速機内部で使われている歯車も例外ではありません。
減速機内部では、潤滑油によって歯車の表面に油膜が形成されることで、酸素や水分に反応して錆が発生することを抑制しています
このように、歯車の摩耗だけでなく、錆などの腐食から守ることも潤滑油の重要な役割の1つです。



新品の減速機には、錆防止のために少しだけ潤滑油を入れて出荷されていますね
潤滑油を交換するときの注意点


減速機の潤滑油を交換するときの注意点及びポイントについて解説します。
適正な潤滑油を準備する
潤滑油を交換する計画を立てる際は、まず交換対象の減速機の取扱説明書を確認し、指定の銘柄・粘度の潤滑油を選ぶようにしましょう。
一般的な粘度の潤滑油は「#150」もしくは「#220」がよく使われていますが、機種によって異なる場合がありますので、必ず確認するようにしてください。


油量の確認方法を調べておく
潤滑油の油量は、基本的には減速機に付いている油面計(オイルゲージ)を見て確認します。
打ち込み式オイルゲージ


打ち込み式オイルゲージは、名前の通り減速機ケースの穴に外側から打ち込んで取り付けられているタイプのオイルゲージです。
減速機に潤滑油が入ると、その油がオイルゲージの内部にも入り込むので、外から油量を確認できる仕組みになっています。


真ん中に赤い丸があるタイプは、油面が赤い丸の前後まできていれば適量という判断になります。
ネジ止め式オイルゲージ
引用先:株式会社 協和(樹脂製長形オイルゲージ)
ネジ止め式オイルゲージは、ネジ止めしたボルト部分から潤滑油が入り込む構造のオイルゲージです。
このタイプは、中央にある赤いバーの前後まで油面が上がってきていれば適正な油量という判断になります。
ネジ止め式は、縦長のタイプのものもあれば、打ち込み式オイルゲージのように丸い形をしたものも存在しますが、適正油量であるかの確認方法はどれも同じです。
他にも、油面計は減速機の機種によって場所や見方が異なる場合がありますので、現物や取扱説明書等で事前にしっかり確認しておくようにしましょう。
なお、設備によってはホコリ等で汚れて油面計が見にくいケースもあります。
油量を誤認しないよう油面計の汚れを落としておくことも非常に重要です。



油面計の整備も潤滑油の点検にはとても大事だよ
適正な油量を確認する
減速機の油量確認は油面計が付いていれば油面計で行えますが、機種によっては油面計がない場合もまれにあります。
また、油面計が付いていたとしても、事前に必要な油量を取扱説明書等で確認しておくことが重要です。
あらかじめ必要量を把握しておくことで、潤滑油の交換作業がスムーズに進み、作業性の向上につながります。



油面計を見ながらやるよりも、必要量を入れてから油面計を見て微調整する方がスムーズです
さらに、無駄な潤滑油の購入を防げるだけでなく、入れる油が足らなくなるといったトラブルも未然に防止できます。
事前に油量が確認できない場合は、減速機から抜き取った時に出てきた油の量を計測し、保全記録として残しておいてもいいですね。
補給した油量を確認する
潤滑油の補給量は多すぎても少なすぎてもいけません、必ず適正な油量範囲で補給するようにしましょう。
油が少なすぎると・・・
歯車の摩耗や焼き付き等、損傷の原因になります。
油が多すぎると・・・
油の温度が上昇しやすくなり、酸化して油の劣化が進みます。


写真のように、油が油面計の赤い丸前後まできていれば適量です。



油が極端に減っていたら漏れている可能性があるから、シール部分等の確認を行おう
抜き取った潤滑油の状態を確認する
抜き取った潤滑油に含まれる鉄粉濃度を測定することによって、減速機内部の摩耗の具合を簡易に診断することもできます。
引用先:新コスモス電機株式会社(潤滑油鉄粉濃度チェッカー)
チェッカー本体の価格がかなり高いので気軽におすすめすることは難しいですが、レンタルのサービスもありますので気になる方は是非チェックしてみて下さい。
まとめ


以上、減速機の潤滑油が重要な理由と交換するときの注意点及びポイントについて解説いたしました。
特に減速機の油量不足はトラブルの原因となり得ますし、設備の安定した機能維持に大きな影響を与えることになります。
各減速機の適正な油量をきちんと把握し、潤滑油の交換時は適正な油量の補給を徹底するようにしましょう。




