機械を動かすのに欠かせない機械部品の1つ「ベアリング」
どんな種類があるか調べようとすると、次のようなことを思ったことはないでしょうか?
新人まつもと「6005」とか「6310ZZ」とか、何か型番がすごくややこしいんですけど。。。
メンテで交換する為に図面で型番を調べた時、「本当にこれで合ってるのかな?」と不安に感じたことも多いと思います。
一見すると数字や記号の羅列にしか見えないベアリングの型番ですが、実はベアリングの仕様を表している意味のある表記なんです。
この記事では、そんなベアリングの型番の見方について、覚えておいて損はない便利な豆知識をお伝えします。



型番の見方を覚えておくと、見ただけである程度の形や仕様が分かるので便利ですよ!
ベアリングの型番表記とは?


ベアリングの型番は「6001ZZ/2AS」や「6121LLUC3/5K」といった表記で表されます。
一見すると数字やアルファベットが並んでいるだけで分かりにくく感じますが、実はそれぞれに明確な意味があり、ベアリングの種類やサイズ、仕様や中に入っているグリースの種類まで示しているんです。
これらの型番の読み方を正しく理解することで、型番を見ただけでどのようなベアリングかをイメージすることができるようになります。



型番の意味が分かるようになると、とても便利だよ!
型番表記の見方について|各項目ごとに詳しく解説
引用:(有)大西エアーサービス:ベアリング呼び番号の見方
ベアリングの型番を項目別に分けると、上記のように①〜⑥に分けることができます。
それぞれの項目の意味について、ひとつずつ見ていきましょう。
①:形式番号
形式番号はベアリングの構造を表す数字・文字になります。
「6」:深溝玉軸受


深溝玉軸受は写真のように最も一般的なベアリング(軸受)です。
「6005」や「6312」など、型番の先頭に”6“が付いているものは、”一般的なベアリング”である深溝玉軸受けを表します。



6000番台のベアリングが一番よく使われるよね
「7」:アンギュラ玉軸受
引用先:一般社団法人日本ベアリング工業会(アンギュラ玉軸受)
「アンギュラ玉軸受」は、パッと見では普通の深溝玉軸受と似ていますが、ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に受けられるように設計されたベアリングのことを言います。
ベアリングの外輪・玉・内輪それぞれの接触面に角度を持たせることで、効率良く荷重を受けられる構造になっています。
「7002」や「7205」のように型番の先頭に”7“を付けると、アンギュラ玉軸受であることを表します。



形式番号はベアリングの種類によって他にもたくさんあります
②:直径系列
直径系列は内径寸法に対する外径寸法の比率を表しています。
言いかえると、同じ内径に対する外径・厚みのサイズ区分を表す数値になります。
この数値は、”7″になると一番薄いベアリングということになり、”7″→”8″→”9″→”0″→”1″→”2→”3″→”4″と数字が進むにつれて厚く・大きくなっていきます。





内径が同じで、ベアリングのサイズだけが大きくなっていくということだね
つまり、例えば同じ内径寸法の「6812」と「6212」というベアリングを比較した場合、”8″よりも”2″の方が直径系列の数値が上になるので、「6212」の方が外形が大きいベアリングということになります。



実際の仕様を見てみると、「6812」は内径φ60mmで外形φ78mm、「6212」は内径φ60mmで外形φ110mmになっています
③:内径番号


内径番号とは、軸を通すベアリングの内輪の内径寸法を表す数字を表します。
内径寸法を表す内径番号は以下の通りです。
- 「00」:10mm
- 「01」:12mm
- 「02」:15mm
- 「03」:17mm
- 「04」:20mm
- 「05」:25mm
- 「06」:30mm
※更に内径番号の数値は、「07」〜「96」まで続きます



「6002」だったら内径寸法がφ12mm、「6005」だったら内径寸法がφ25mmといった感じだね
実はこの内径番号、「04」〜「96」間は×5倍すると内径寸法が計算できます。
例えば内径番号が「6006」であれば6×5=30mm、「6008」であれば8×5=40mmといった具合になります。
ただし、以下は例外になるので注意が必要です。
- 内径番号が「00」〜「03」のベアリング
- 内径寸法が5の倍数でないベアリング
- 内径寸法がφ500mmを超える(内径番号:96以上)ベアリング
この場合は単純に「内径番号×5=内径寸法」ではないので、上記の表記が出てきたときはカタログで確認するようにしましょう。



だいたいのベアリングは上記の法則で内径寸法が予測できます
④:シール・シールド記号
シール・シールドはベアリングの側面に取り付けられている部品で、ベアリングの中に封入されているグリースが外部へ出ることを防ぐとともに、ホコリや異物などの侵入を防止する役割があります。
④の部分では、型番によって様々な種類のシール・シールドを指定することができます。
「Z」or「ZZ」:シールド付
④の部分に「Z」もしくは「ZZ」が表記されているとシールド付になります。



「6001Z」や「6002ZZ」といった感じだね
シールド付のベアリングは下のような写真の形状をしていて、ベアリングの側面に金属製のフタを取り付けることで、ベアリングの内部を保護したり、グリースを外に逃げにくくする役割があります。


シールドは内輪・外輪に密着しているわけではないため、ある程度ホコリなどの異物の侵入を防いでくれますが、完全にシャットアウトできるわけではありません。
その一方で、内輪・外輪に接触していない構造のため、ベアリングの回転を邪魔しにくいという特徴もあります。
なお、「Z」と「ZZ」の違いはシールドの取り付け方法に違いがあり、「Z」は片側シールドで「ZZ」は両側シールドを表しています。
片側シールド(Z)は、ベアリングの片方のみにシールドが取り付けられていて反対側は開放状態、両側シールド(ZZ)は両面にシールドが取り付けられている仕様となります。
「LU」or「LLU」:接触形ゴムシール付
④の部分が「LU」「LLU」と表記されていたら、接触形ゴムシールが取り付けられたベアリングになります。
「Z」・「ZZ」と同じように、「LU」が片側ゴムシール付で「LLU」が両側ゴムシール付を表しています。
引用先:日本精工株式会社(「低フリクション高密封シール」を開発
~密封性能と低フリクションを両立~)
接触ゴムシールは、外輪と内輪にゴム製のシールが「接触」して隙間を埋めてくれているため、鉄製シールドと比べてベアリングの中に異物が入りにくいというメリットがあります。
そのため、屋外やホコリが堆積しやすい設備など、水や異物が侵入しやすい環境によく使われています。
一方で、シールが外輪と内輪に接触する構造であるため、回転時の抵抗が大きくなりやすく、高回転での用途にはあまり向かないというデメリットも存在します。



モーターなどの用途には注意が必要ですね
ちなみに、「LU」・「LLU」はメーカーがNTNの場合の表現になり、メーカーがNSKの場合は「DU」・「DDU」という表記になります。



接触ゴムシール以外にも、非接触シールなどメーカーによって色々なシールの種類があるよ
表記なし:オープン
ZZやLLUなどの表記がない場合は、シール無し(オープン)のベアリングという意味になります。


オープンのベアリングは側面には何もなく中が丸見えなのが特徴で、減速機の中など油に常に浸っているような箇所によく使われています。



油の中であれば給油する必要がなくなります
⑤:内部すきま
内部すきまとは、ベアリングの内輪もしくは外輪のどちらかを固定した状態で、もう一方を動かした場合に生じる移動量のことを言います。



内輪と外輪との「遊び」というやつだね
引用先:JTEKT(軸受の内部すきま)
上図のように上下方向のすきま(遊び)を「ラジアル内部すきま」と言い、左右方向のすきま(遊び)を「アキシアル内部すきま」と呼びます。
ベアリングの内部すきま量は、型番指定によって変更することができ、使用環境や運転状況に応じて使い分けることができます。
例えば
- 高速回転によって発熱する可能性ある用途 → 熱膨張を考慮してすきま量の大きいものを選定
- 回転時の振動・騒音をできるだけ抑えたい → すきま量の小さいものを選定
指定する型番はそれぞれ次の通りです。
CM:電動機用ラジアル内部すきま
“電動機用”ということにはなっていますが、様々な用途に使える一番ポピュラー内部すきまの型番が”CM”になります。



「6005CM」や「6310ZZCM」といったかたちで表記されます
ベアリングを購入するときに内部すきまを指定しない場合は、この「CM」でくることが多いです。
モーターのローターから駆動ギアやガイドローラーまで、だいたいの用途においてはこの型番で対応ができます。
CN:普通すきま
「CM」と比較して同じか僅かにすきまがある(1μm程すきま量が多い)のが「CN」です。特別な条件が無ければ「CM」もしくは「CN」でも特に大差はありません。
C2:普通すきまより小
「C2」は「CN」と比較して1μm程すきまが多い仕様を指定した型番です。
「CN」を境に、「C2」→「C1」と数字が少なくなるにつれて内部すきまが少なくなります。
C3:普通すきまより大
「C3」は「CN」と比較して1μm程すきまが多い仕様を指定した型番です。
「CN」を境に、「C3」→「C4」→「C5」と数字が大きくなるにつれて、内部すきま量が多くなります。
例えば、「C2」になると「CN」より隙間量が少なくなります。



内部すきまの選定は、設計者でないと難しい分野だね



あくまで、このような型番指定ができるということだけ覚えて頂ければと思います
⑥:潤滑記号(グリース記号)
「潤滑記号(グリース記号)」とは、ベアリングの中にあらかじめ封入されているグリースの種類を表しています。
2AS:アルバニアグリースS2
深溝玉軸受で特にグリースを指定しないで注文すると、標準で封入されてくるのがこの「アルバニアグリースS2」になります。
このグリースは使用温度範囲が-25℃〜120℃とかなり幅広いので、特殊な環境でない限りは問題なく使用することができます。
なお、「2AS」はメーカーがNTNの場合で、メーカーがNSKになると「AS2」という表記になります。



潤滑記号は「6005ZZCM/2AS」というように、”/”を付けて表記されるよ
5K:マルテンプSRL
「マルテンプSRL」は、マイナス−40℃〜150℃という幅広い温度範囲で使用できる特徴をもったグリースです。
特に、冷凍倉庫など−25℃以上にもなるような低温環境下でよく使われています。
NTNでベアリングを購入する場合は潤滑番号に「5K」を指定すると選択することができます。



他にも様々な用途に対応できるグリースの銘柄が用意されていますので、使用用途に応じて使い分けましょう
表記の意味を理解すれば役に立つ


以上、ベアリングの型番表記の意味・見方についてお伝えしました。
ベアリングの型番表記には他にも種類やバリエーションがありますが、一番よく使われている深溝玉軸受の表記を覚えると他にもある程度応用が利くようになります。
ベアリングの型番表記を覚えておけば、型番だけである程度の仕様が分かりますし、図面で型番を見たときに「何かおかしくないか?」といった違和感にも気付きやすくなりますので、現場での不適合発生を事前に防止することにも繋がります。
本記事を参考に、ベアリングの型番の読み方を今後の仕事に役立ててみてください。






